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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

3月イベント「聴覚障害者のコミュニケーション能力の育成について考える」の報告


インフォメーションギャップバスターでは情報バリアフリー推進事業の一環で当事者の自立を支援するために情報リテラシー教育(聴覚障害、発達障害者の社会人のスキルアップ)を実施しています。

情報リテラシーとは、情報収集、分析、発信などの情報のインプットからアウトプットまでのプロセス、また、手段もネットから会話まで様々なものが含まれていると考えています。

教育事業を進めていく中で、社会人になってからの教育だけでは、不十分でもっと早期教育が必要なのではないかという仮説が生じてきました。

そこで、今回は学生(小中高大学)及び社会人の情報の扱い方、もっというとコミュニケーションの問題について関わっている方を講師として招き、俯瞰してみる試みをいたしました。各講師が担当したテーマは次の通りです。

①「ろう教育でのコミュニケーション能力の育成について」橋本一郎(亜細亜大学 非常勤講師)
②「大学におけるリテラシー教育の現状と今後の展望」松﨑 丈(宮城教育大学 特別支援教育講座 准教授)
③「社会人の立場からみた、聴覚障害者にとって必要な能力は?~働く聴覚障害者・聴者対象の調査をもとに~」水野映子(第一生命経済研究所:ライフデザイン研究本部上席主任研究員)
④パネルディスカッション(コーディネーター:NPOインフォメーションギャップバスター理事長 伊藤芳浩)

※本企画については、宮城教育大の松崎さんたちに多大な助言をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 

本企画を通して、次のような課題が浮き彫りとなりました。

・情報の壁(情報バリア)の存在を聴者・聴障者双方が良く理解するための取り組み・環境づくりが必要
・当事者自身がどのように情報バリアを説明していくかという当事者研究が重要
・教育機関、企業など当事者が関わる組織において、情報バリアについて解消のアドバイスを関係者全員に行う立場にいるメンターが必要

インフォメーションギャップバスターの今後の課題として、検討していきたいと考えています。

多大なご協力を頂いた松崎さん、橋本さん、水野さん、誠にありがとうございました。

次に講師の一人の松崎丈さんのコメントを本人の許可を得て引用させていただきます。


今日は、東京の田町駅近くにある東京都障害者福祉会館で仕事でした。

私を含めた講師3名で、聾学校、大学や企業の情報バリアをめぐる諸問題について実践事例や調査データなどを基に何を考える必要があるのかをそれぞれ問題提起し、フロアとも議論。この議論から重要な観点を次のように抽出できたことは収穫でした。

その時その場での情報格差を解消するための技術・方法論は次々と開発されてきている一方で、何/誰のために解消するのかその目的・価値論を吟味する観点は利用者自身でさえ忘れられてしまいがちであること。そこで、個別具体的な障害状況から問題を整理して、目的・価値を引き出し/再吟味し、その目的・価値に即した技術・方法の開発へと、現実状況に基づいたより妥当な解消法を引き出す思考と対話(教養、リテラシー)が重要になること。しかし、それが忘れられてしまいがちな問題の背景として、日常体験の制約だけでなく、以上の思考と対話を実践する教養教育の不備不足によるものも考えられること。したがって今後は、聾学校はもちろん、いわゆる利用者としての変化や成長をうながす場がない大学や企業で、その教養教育を誰が実践するのかを体制整備も合わせて考えていく必要があること。他にも重要な指摘がたくさん出てきました。

私たち講師全員、参加者の皆さんの立場や理解を配慮して、お互いの発言内容を相互リンクさせながら議論を深めるように連携できたので、お二人とご一緒に仕事できて楽しかったです。私自身の仕事にも反映させていきたいほどたくさん学べましたし。またいつか別のところでご一緒できたらと思います。

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