Information Gap Buster 特定非営利活動法人

イベント(11/4開催)「手話による医療通訳の必要性について」の報告(詳細版)


講演1 テーマ「入院治療におけるコミュニケーション」

講師 大杉 豊氏(ろう者、筑波技術大学教授)

ご自身の入院経験に基づき、ろう者の立場から表情豊かに語って下さいました。

◆入院中の体験より

  • 入院中、自分が聞こえないために、過剰に音を出さないように神経を使ったり、静かに過ごすように気遣っていたせいか、ナースステーションで「模範的な患者さん」とウワサされていたと知り、「本当はちがう!」と怒り心頭。
  • ナースコールを押してもナースが来てくれないので不安になり何度も押した。実は、押したあと横にあるスピーカーから「少しお待ちください」など返答があったことを後から知ったのだが、ろう者には分からないため、配慮すべき。
  • 点滴を利き手の甲に刺され、手話で話すのに支障が出るため、担当ナースに抗議したが、手話に対して配慮がなく、「点滴を付けても動けるから大丈夫」と対応してくれなかったので、またまた怒り心頭。
  • 車いすに座り点滴中(動けない状況)に火災報知器が鳴り、幸い家族が一緒の時で状況把握ができ、誤動作と判明したが、実際起こり得る可能性があると実感。
  • 四人部屋に入院。カーテンで個人スペースを区切っている為、同室の方と顔を合わせる機会が少なかったが家族が面会に来た時に、実は同じ部屋の患者同士でおしゃべりにいろいろな情報がある事を家族が教えてくれた。主には雑談だが、入院生活の過ごし方や看護師に関する情報が多い。その情報があったら、入院中の対応に生かせたのではと情報格差を感じた。
  • 看護師とは筆談でのコミュニケーションをとっていたが、雑談でも丁寧に書かれて文章が長すぎると、書き終わるまで待つなど、逆に疲れてしまう。

◆エンパワーメントの必要性

エンパワーメント:ひとりひとりが,人間関係の充実や社会変革を図るに必要な力をつける。

  • 手話通訳の依頼方法についての課題(入院中FAXでのやり取りは難しいと実感)
  • 手術の検討など、医師から説明を受けて重大な判断を下す時は、自分自身の責任で行う必要がある。そのため、医師の言葉をそのまま文章化してもらい互いに確認しサインを交わし、じっくり読んで理解し納得した上で決定する。
  • 医師のアドバイスを受けながら日ごろから自身の健康管理が必要。

「入院治療におけるコミュニケーション」大杉豊 from NPO Information Gap Buster


講演2 テーマ「大学病院での院内通訳活動の現状報告と課題」

講師 木立 玲子氏(北里大学病院・看護師、手話通訳士)

講演1の大杉氏とは逆の、看護師として手話通訳としての立場。「ソフトクリームが大好き!」とおっしゃる小柄で笑顔が素敵な木立氏。

ビジョン達成の為に戦略的にそしてしなやかに挑戦しておられる様子がうかがえました。

参加者にも、看護師を退職し現在、国立リハビリテーションセンター学院で手話通訳士を目指して勉強中の方、又看護師を目指す方もいらっしゃり講演を通して具体的な目標をいただく事ができたようでした。

木立氏は、大学病院勤務中、キャリアビジョンの意志提示が必要な場面で、「スキルアップしたい、手話で会話できたら楽しいかも」という動機から惜しまれながら北里大学病院を退職。

国立リハビリ―テーションセンター学院入学。卒業後、以前勤務していた北里大学病院へ再就職。院内手話通訳活動を開始。

◆専任設置通訳のメリット

  • カルテを確認できる。→経過を把握して通訳可能。
  • 科に合わせて事前準備できる。→診察室に合わせて椅子の配置等。
  • 継続的なサポートが可能。→依頼者に安心感を与えられる。

◆患者のサポート体制

患者を中心に、医師・看護師・薬剤師・他医療従事者・家族・管理栄養士・手話通訳が円を描くように連携を取りながら関わる事が必要だが現状は難しい。聴覚障害者に対する理解について、医療関係者への啓発が必要。

◆院内手話通訳活動の実際

  • 基本は看護師業務
  • 手話通訳依頼時は通訳業務を優先

初回に院内通訳について説明

通訳希望あり→通訳実施 通訳希望なし→コミュニケーション方法について確認

確認内容を医療者へ情報提供

  • カルテに聴覚障害の情報があれば、医師より院内通訳へ依頼するケースが増加

◆今後の課題

  • 聴覚障害の患者についての知識提供(院内での啓発や情報共有など)
  • 手話通訳調整マニュアルの作成
  • 手話通訳に対するインフォメーション(現在は院内表示なし、HPにも記載なし)


講演3 テーマ「医療通訳としての手話通訳の必要性」~手話を言語というのなら~

講師 寺嶋 幸司氏(手話通訳士・枚方市の医療通訳を実現させる会代表・医療通訳士協議会理事・倫理規定政策実行委員)

今回は、美声を封じて手話で語って下さいました。ご自身のご家族への病状の告知の経験を通しての気づきや、様々な活動をとおして日本の医療における手話通訳の現状と海外での取り組み。声を高く訴えるだけではなく、戦略的に想定できるメリットを訴えながらアピールする熱い姿に心うたれました。

◆アメリカにおける医療通訳制度

  • 専門職としての医療通訳者が多くの病院で配置されている。(通訳者はヨットを所有していると言われている、職業として確立されている。)
  • 医療通訳士の倫理規定がある。(IMIAのHPで公開)

◆日本の医療通訳制度の今

  • 手話通訳制度における医療通訳の占める割合は46.4%(2002年大阪府内)
  • 手話通訳者は、手話について専門的な学習を積んでいても、医療について専門家を交えての研修はほとんど受けていない。
  • 福祉サービスとしての派遣制度(限界がある、地域格差、通訳者のレベルのばらつき)

◆今後の課題

  • 医療通訳としての手話通訳のスキルアップ
  • 医療知識をもった通訳者の養成(大学への申請等)
  • 「手話は言語である」という理解のもと、音声語医療通訳の整備と共同の取り組みの必要。
  • 医学モデル(自己責任)→社会モデル(社会の責任)へと考え方を変える。

「医療通訳としての手話通訳の必要性」寺嶋幸司 from NPO Information Gap Buster


パネルディスカッション

3人の講師、及び聴覚障害者医療サポート協会代表の医師で手話通訳士でもある平野 浩二氏とろう者の薬剤師である柴田 昌彦氏も加えて、通訳事例検討会が行われた。

2つの事例が出され、聴覚障害者に限らず、外国人などの異文化の人に対しての医療通訳の倫理や医療通訳の事例もあげられ、ディスカッションが行われた。

外国人などの異文化の人や聴覚障害者の患者とのコミュニケーションに専門性を持つ医療通訳の必要性や知識ノウハウのコラボレーションの取り組みについて、医療分野のみならず一般社会においても重要な課題テーマであることを再認識することが出来て、有意義であった。

パネルディスカッション資料 from NPO Information Gap Buster

今後の予定としては、2018年度中に本企画の続編を実施する予定で調整中である。

以 上
(文責:吉崎雅美、西川信)

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