Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【報告】「ユニバーサルマナーから始まる共生社会 ~情報バリアの解消を目指して~」詳細レポート


2/2開催 「ユニバーサルマナーから始まる共生社会 ~情報バリアの解消を目指して~」

■開催日
2019年2月2日(土)15:00~17:00

■開催場所
日比谷コンベンションホール

■プログラム
1. コミュニケーションバリアの解消 IGB 伊藤 芳浩

2. ユニバーサルマナーから始めるおもてなし ミライロ 薄葉 幸恵氏

3. 電話リレーサービスの紹介 日本財団 親松 紗知氏 、損害保険ジャパン日本興亜株式会社 池田 幸一氏

■ コミュニケーションバリアの解消

~コミュニケーションバリアとは~
聴覚障害者が生活する中で一番の問題は、相手とのコミュニケーションになる。
IGBでは聴覚障害者と聴者の間で発生するコミュニケーションの問題を、コミュニケーションバリアと表現しており、それはあたかも双方の間に存在する見えないガラスがある様相を呈する。
コミュニケーションバリアが存在すると、聴覚障害者の社会参加が進まず、労働力の損失、ひいては社会の損失になる事が懸念される。それは聴覚障害者の離職率が高い事からも裏付けされている。
IGBの伊藤理事長はコミュニケーションバリアの解消をする為に、当事者のスキルアップする自助だけではなく、社会がお互いを助け合う共助、国が支援する公助の3本柱で進める事が大事であることを伝えている。

~電話リレーサービスの普及をめざして~
電話リレーサービスはこの公助の1つになる。このサービスは聴覚障害者と聴者の間に第三者(オペレータ)が入り、聴覚障害者はLINEや手話を使ってオペレータに要件を伝えると、オペレータが聴者に電話を介して言葉で伝える。聴者の言葉はオペレータが逆に文字や手話に変換して聴覚障害者に伝える。
このサービスはまだトライアルで本格的な導入はこれからだが、安倍首相は「電話リレーサービスは公共のサービスである」と明言しており、これを受けて総務省が主導する電話リレーサービスの普及に向けた本格的な活動がスタートした。しかし、当事者が継続して声を上げていかないと、このサービスが絵に描いた餅で終わる可能性があるし、稼働したとしても持続する事は難しくなる。
その為に聴覚障害者はもとより聴者も社会的損失を防ぐために、声を上げてその対応を訴える必要がある。IGBの伊藤理事長は「電話のバリアをなくして、聞こえる人も聞こえない人も自由にコミュニケーションが出来る豊かな共生社会を作る」と力強いメッセージで締め括っていた。

■ ユニバーサルマナーから始めるおもてなし

「障害は人ではなく社会に存在する」講師の薄葉氏から放たれた言葉は大きなインパクトがあった。
日本では、障害者と接する機会が少なく、また、この分野に関する教育も充分ではなかったため、障害者に対する経験や知識不足に由来するネガティブなイメージが一般的であり、また、障害を個人に帰するものと規定する、障害の医療モデルが未だ社会の風潮として一般的であるため、どうしても障害は、障害者個人の問題として捉えられてしまいがちである。
ここ最近では、パラリンピック等スポーツで活躍する障害者がメディアに取り上げられる機会が増え、障害者のイメージは徐々に変わりつつあるが、実際の生活では、依然として障害者が社会から排除されている一面も少なくない。
しかし、社会が障害を含む多様性を包含できる方向へと変わっていけば、障害者の社会的障壁は解消され、障害という言葉さえも不要となる時代が到来するかもしれないし、それが実現する過程において、社会的障壁を解消するだけでなく、障害から価値を生み出すバリアバリューへと昇華できると思われる。
(バリアバリューは「障害を価値へと変える」という意味で、株式会社ミライロが提唱している理念)
人は誰しも、高齢になるにつれ身体機能に制限を感じるようになるが、高齢者の先駆けと言われる障害者が日々の生活の中で体感している社会的障壁を社会へ問い、課題解決への道程を示すことによって、超高齢社会の課題に直面する日本において、高齢者を取り巻く環境改善の一助となることだろう。高齢化先進国である日本において、今後、バリアバリューという理念は尊重されるに違いない。
それでは、社会が障害を含む多様性を包含するためにはどのようにしたら良いのだろうか?
薄葉氏は「自分とは違う誰かを思いやり、適切な理解のもと行動すること」すなわち、ユニバーサルマナーを誰もが心がけることが共生社会を築くための第一歩になる、と結んでいた。

■ 電話リレーサービスの紹介

Section1 日本財団 親松 紗知氏
Section2 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 池田幸一氏
2011年に発生した東日本大震災の被災地支援として日本財団が聴覚障害被災者へ行った支援のなかで、電話リレーサービスのニーズが特に多かったことから、2013年より全国に対象を広げてモデルプロジェクトを開始した。利用登録者数や利用回数は増加しており、非常に助かっているといった声も多いという。例えばお店や病院の予約など今まで現地へ出向いていた用事は、電話リレーサービスを使ってその場ですぐ済ませることができるようになった等である。
日本財団は、モデルプロジェクトは今後もずっと継続するものではないため、今後も継続してサービスが提供されるための制度を国がしっかり整備していくよう、社会全体で声をあげ国に伝えることが大事であると強く訴えていた。
一方、損害保険ジャパン日本興亜株式会社で当初は聴覚障害者との会話をLINEやメールで実施していたが、どうしても電話でないと伝わらない。そこで電話リレーサービスを使って評判が良かったのがきっかけとなり導入につながった経緯の説明があった。
また導入はしてみたが課題もあり、その1つが個人情報保護法に対する課題で損保から第三者を経由して個人情報を伝えるのは出来ない事である。この課題は個人情報取り扱いの法的整備が必要とのことだった。

■ 講演を振り返って

繰り返しになるが、電話リレーサービスは聴覚障害者の間で普及は進んでいるものの、現状は日本財団のモデルプロジェクトであり、今後もサービスの継続が保障されているものではない。
国も本格的に検討を始めているが、費用面、運営面で実用化に向けた課題は少なくない。
日本の社会がもっと障害者に関心を持ち、障害者との共生が進んでいれば、電話リレーサービスの実用化に向けたハードルは低かったかもしれない。しかしながら、現実と理想の隔たりは小さくない。
薄葉氏の講演でも「自分とは違う誰かに対して思いやりを持ち、適切な理解をもって行動すること」というフレーズがあり、その言葉に新鮮味を感じる人も少なくないだろう。
今後、電話リレーサービスの実用化をきっかけに人々の意識を変え、障害者が共生できる社会になる事を切に願ってやまない。

(文責:IGB理事 吉岡 弘貴)

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