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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【声明】旧優生保護法違憲訴訟判決について


本日、2020年6月30日に東京地裁民事第14部は、原告である北三郎さん(仮名・77歳)の請求を棄却するとの判決を言い渡した。

原告は、1957年に強制的に不妊手術を受けさせられたため、手術は憲法13条が保障するリプロダクティブ権(性と生殖に関する権利)の侵害に当たり、国は賠償義務を負うと主張した。さらに、国と国会は、被害回復のための立法が必要だったのに怠る立法不作為があったとも訴えていた。

これに対し国は、手術から60年余が経過しており、不法行為から20年を経過したことをもって国家賠償請求権が消滅していると反論した。立法不作為についても、原告は国家賠償法に基づいて被害回復を求めることができたため、別の補償制度の立法が必要不可欠だったとはいえないと主張していた。

判決は、原告の請求棄却であり、この判断は、特段の事由がある場合には除斥期間の経過による免責を認めないとした最高裁の判旨にも悖るものだ。また、被害者への救済措置を取らなかったことや被害回復のための法律を作らなかったことについても違法性を認めず、優生手術の結果、子どもや家庭を作るといった誰にでも当たり前に保障されるはずの人権が国家から否定され、人生そのものが大きく狂ってしまった大勢の被害者の悲痛な声に背を向けるもので、誠に遺憾な結果だ。

NPOインフォメーションギャップバスターは、今後も旧優生保護法下における強制不妊手術等による被害者の被害の回復を図るための働きかけをすると共に、「障害のある人や家族やすべての人とともに生きる」共生社会をつくるよう努めることを表明する。


【裁判概要】

北三郎さんは昭和32年、非行を理由に宮城県の福祉施設に入所していた14歳の時、施設の職員に何も知らされないまま病院に連れて行かれ、不妊手術(注、子どもができなくなる手術)を受けさせられました。

北さんは、手術のことを周囲に打ち明けられませんでした。

29歳の時に結婚。妻は子どもができずに悩んでいましたが、手術のことを伝えることはできませんでした。

打ち明けたのは結婚してからおよそ40年後。妻が亡くなる間際になってからでした。

妻は、北さんを責めることもなく、「ごはんだけはちゃんと食べるのよ」と北さんの体を気遣いながら、亡くなりました。

妻が死亡してから5年後のおととし、手術を受けた人たちが声を上げはじめ、ニュースで国を訴える動きが出てきたことを知りました。

裁判で証言をしてくれた、当時高校生だったお姉さんも北さんが手術を受けたことは誰にも言ってはいけないと祖母から口止めされていました。

【藤木弁護士・IGB理事コメント】

「今回は『不当判決』でした。最高裁で『逆転勝訴』が出せるように原告北さん、支援者、弁護団で力を合わせて頑張っていきます!!裁判が始まってから2年、課題を知り、一緒に考え、支援してくださる方が増えたことが大きな前進だと思います。

全国では、札幌、仙台、東京、静岡、大阪、兵庫、福岡、熊本で合計24名の方が裁判。11名の聞こえない方を含め、様々な障害種別の方、また、東京の原告の北さんのように(障害はなく)非行を理由に手術を受けさせられた方もいます。

ちなみに、私の弟も聞こえません。私自身”聞こえる家族”(SODA)の立場から、自分の生い立ちへの振り返り、自分自身が子どもを産むかどうかも含めて、この裁判と向き合ってきた2年間でした。
原告の方々だけでなく、講演先で様々な方々の体験や考え、思いを教えていただきました。
障害当事者でお子さんを育てている方々、聞こえない親ももつ聞こえる子ども(CODA)の方々との関わりもとても貴重でした。

障害の有無や種別、性別、障害当事者、家族、支援者等の立場により、視点や見える世界が変わっていきますが、最終的な目標・めざすところは共通していると思います。
これからもご支援よろしくお願いします。」

(参考)
東京判決の一日

判決要旨・弁護団声明

NHKろうを生きる難聴を生きる

藤木弁護士と兵庫のろう者の原告夫婦が取り上げられています

【ニュース(2020年6月30日時点、期限によりリンク切れになっているものもあります)】
NHK手話ニュース6月30日(火)

NHK(松田弁護士コメントが文書中にあり)

NHK 2020年06月30日 14時10分
旧優生保護法 賠償の訴え退ける

NHK 2020年6月30日 17時21分
旧優生保護法による不妊手術 賠償求めた訴え退ける 東京地裁

NHK 2020年6月30日 21時10分
旧優生保護法訴訟 賠償求めた原告の男性 敗訴の理由は

時事 2020年06月30日17時18分
菅官房長官「主張認められた」 強制不妊で東京地裁判決

時事 2020.6.30
垂れ幕を掲げる弁護士

朝日 2020年6月30日 15時46分
旧優生保護法の強制不妊、憲法上の自由を侵害 東京地裁

テレビ東京 2020.06.30 18:30
旧優生保護法敗訴 原告男性が会見「命の限り戦っていく」

テレ東NEWS 2020.6.30
東京地裁・旧優生保護法訴訟判決 賠償認めず

日経 2020/6/30 14:26 (2020/6/30 17:30更新)
社会・くらし
強制不妊、賠償認めず 「憲法保護の自由侵害」東京地裁

毎日 2020年6月30日 20時11分(最終更新 6月30日 21時25分)
「私の体を元に 人生返して 請求認めないなら…」
旧優生保護法・東京訴訟

毎日 2020年6月30日 19時58分(最終更新 6月30日 21時29分)
「除斥期間の適用は酷だ」市野川・東大教授が批判 旧優生保護法・東京訴訟

毎日 2020/06/30(動画)
旧優生保護法訴訟 原告側の賠償請求棄却 東京地裁判決 仙台に続き

産経 2020.6.30 22:52
優生手術は憲法で保護された自由を侵害 強制不妊、東京訴訟で地裁

読売 2020年6月30日(火)14時50分
旧優生保護法・強制不妊手術の違憲性認める
…東京地裁、賠償請求は棄却

共同 2020/6/30 16:33
強制不妊、賠償請求を棄却
旧優生保護法、東京地裁

Kyodo news 2020/06/30(動画)
強制不妊、賠償請求を棄却 旧優生保護法、東京地裁

毎日 2020/06/30(動画)
旧優生保護法訴訟 原告側の賠償請求棄却 東京地裁判決 仙台に続き

ANN news 2020/06/30(動画)
原告男性「命の限り戦っていく」旧優生保護法で判決(20/06/30)

ハフポスト 2020年06月30日 16時05分
旧優生保護法の強制不妊に違憲判決。賠償請求は棄却 東京地裁

この記事のリンク | カテゴリ: パブリックコメント・声明, 家族問題研究
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