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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【ご報告】2020年度調査事業「病院で働く手話言語通訳者の全国実態調査」の調査報告書公開


国立大学法人筑波技術大学とNPO法人インフォメーションギャップバスターが連携して実施した、2020年度調査事業「病院で働く手話言語通訳者の全国実態調査」の調査報告書が完成しましたので、公開いたします。

標記調査は、平成30(2018)年度厚生労働省委託事業「専門分野における手話言語通訳者の育成カリキュラムを検討するためのニーズ調査研究事業」(以下、H30事業)の調査によって、明らかになった医療分野における手話言語通訳のニーズと課題に基づいて、(1)手話言語通訳者が働いている病院のリストづくりによる現状把握と、(2)病院で働く手話言語通訳者に関する全国実態調査による現状把握、ニーズと課題の明確化を目的として行いました。

※H30事業調査報告書

この調査結果から、手話言語通訳者を配置している病院は全国で42病院存在していることが明らかになりました。また、病院に配置されている手話言語通訳者(以下、病院内手話言語通訳者)において、養成・研修面と制度・体制面の両方にニーズと課題が山積していることも明らかになりました。さらに、H30事業で提言している対策を踏まえて、短・中・長期的対策を検討しました。


 

 

【調査報告書】病院で働く手話言語通訳者の全国実態調査

※42病院のうち掲載許可を頂いた38病院は以下リンク先にて公開しています

手話言語通訳者が配置されている病院のリスト

 

 

 

 


調査結果の概要は以下の通りです。

 

①病院が手話言語通訳者を配置しても、通訳の財源がなく経営的な利点がない

本調査の結果、病院内手話言語通訳の財源は、「病院経費」が21/31病院(67.7%)、「特になし」が4/31病院(12.9%)、「自治体経費」が3/31病院(9.7%)で、この3つが順に多い結果となりました。また、ごく一部の地域では意思疎通支援事業により手話言語通訳者が病院へ定期配置されている例もありましたが、ほとんどの病院がそれぞれの経費で手話言語通訳者を配置・運営しており、独自の財源等は確認されませんでした。さらに、確認できた2019年度の22病院における総通訳件数は26,411件であり、9病院で確認できた総対応延べ人数は7,265人、12病院 (無回答1病院含む) で確認できた総対応実人数は5,154人あり、これだけ多くの手話言語通訳が財源なく運営なされているという状況も判明しました。

 

②手話言語による医療通訳育成カリキュラム基準がない(医療の基礎知識等医療の専門性習得・向上は、ほぼ病院内手話言語通訳者の自己努力に委ねられている)

医療・福祉に関する免許や資格を有する者を除き行われた、医療に関する基礎知識等、医療の専門性の有無に関する質問では、「なし」と答えた人が19/20人 (95.0%) でした。なお、H30事業の結果を踏まえて、2019年度から国立大学法人筑波技術大学が医療分野における手話言語通訳者育成カリキュラムの検討の取り組みを開始しています。

 

③病院内手話言語通訳者の身分が不十分

兼務(手話言語通訳者とはまた別の医療職や事務職としての雇用)で雇用されている場合を除き、28/33人 (90.9%) が非正規雇用でした。

 

④病院内手話言語通訳と派遣手話言語通訳の対応範囲や役割が明確にされていない

本調査の結果をもとに病院内手話言語通訳の利点と欠点を体系的に整理しました。

※調査報告書p183~187参照

 

⑤病院内手話言語通訳者によるネットワークがなく、病院内通訳体制がそれぞれの病院独自になっており統一されていない

本調査を機に、病院内手話言語通訳者によるネットワークを構築し、全国の病院内手話言語通訳の体制標準化の実現を目指すことになりました。

 

詳細は調査報告書に展開していますので、病院で働く手話言語通訳者のさらなる拡充に向けて、この報告書が活用されることを心より願っております。

※標記調査は、NPO法人インフォメーションギャップバスターのクラウドファンディングによる「手話による医療通訳育成・普及プロジェクト」と国立大学法人筑波技術大学の2020年度の「学長のリーダーシップによる教育研究等高度化推進事業」を調査資金として実施しました

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