2026年5月14日、参議院議員会館にて「障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟」が開催され、伊藤IGB理事長は、DPI日本会議特別常任委員として、佐藤聡DPI日本会議事務局長と一緒に出席いたしました。
議事の冒頭、「新役員選任」では、長年会長を務められた衛藤晟一元参議院議員の退任に伴い、新会長として福岡資麿参議院議員の就任が今井絵理子事務局長より提案され、満場一致で承認されました。これにより、議連は以下の体制で進めていくことになりました。

【障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟 役員】
- 会長:福岡 資麿(参・自民党)
- 副会長:永岡 桂子(衆・自民党)、笹川 博義(衆・自民党)、石田 昌宏(参・自民党)、梅村 聡(参・日本維新の会)、高木 かおり(参・日本維新の会)、浮島 智子(衆・中道改革連合)、竹谷 とし子(参・公明党)、伊藤 孝恵(参・国民民主党)、福島 みずほ(参・社民党)、大門 実紀史(参・共産党)、吉良 よし子(参・共産党)、梅村 みずほ(参・日本維新の会)
- 会長補佐:滝波 宏文(参・自民党)
- 幹事長:輿水 恵一(衆・中道改革連合)
- 幹事長代行:東 徹(参・日本維新の会)
- 副幹事長:松本 尚(衆・自民党)、勝目 康(衆・自民党)、池下 卓(衆・日本維新の会)、早稲田 夕季(衆・中道改革連合)、伊藤 孝江(参・公明党)、熊谷 裕人(参・立憲民主党)、三浦 信祐(参・公明党)、田村 まみ(参・国民民主党)、天畠 大輔(参・れいわ新選組)、白川 容子(参・共産党)、北村 晴男(参・日本保守党)、河合 道雄(衆・チームみらい)
- 事務局長:今井 絵理子(参・自民党)
- 事務局長代行:牛田 茉友(参・国民民主党)
- 事務局長代理:宮路 拓馬(衆・自民党)、原田 大二郎(参・公明党)
3つの法律(読書バリアフリー法/障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法/手話施策推進法)にかかる関係省庁の取組について報告がありました。概要としては以下の通りです。
1. 手話施策推進法(令和7年6月25日施行)── 今回の最大トピック
昨年成立・施行されたばかりの手話施策推進法に関する各省庁の取組が、今回はじめてまとまった形で示されました。
新しい動きとして注目したい点
- 文部科学省「手話に関する理解啓発動画」の公開:小・中・高の聴覚障害のない児童生徒向けに、長井恵里氏・那須映里氏らが出演する動画コンテンツが制作・公開されました。さらに東京2025デフリンピックのメダリスト(山田真樹氏、亀澤理穂氏、矢ヶ部紋可氏)も出演しており、教師用活用の手引も併せて公開されている点が興味深いところです。デフリンピックを契機とした学校現場への手話の橋渡しという文脈が明確に意識されているように感じました。
- 「障害のある学生の修学・就職支援促進事業」に学術手話通訳が組み込まれた:大学等における学術手話通訳の実態把握、手話通訳団体等との連携、ガイドラインやパターン別の実践例策定・公表、研修実施までが事業化されました。高等教育における手話アクセスがここまで明示的に位置づけられたのは、大きな一歩なのではないかと思います。
- 聴覚障害教育の充実事業(教師向け手話習得支援コンテンツの開発):教員や教員を目指す学生が活用できる手話習得支援コンテンツの開発が始まります。
- 若年層向け意思疎通支援者養成研修事業:おおむね35歳以下の大学生などを対象に、通常2年程度かかる手話奉仕員・通訳者養成カリキュラムを1年で修了できる短期集中型に再設計。支援者の高齢化への危機感が背景にあります。
- 意思疎通支援従事者確保等事業(マイナビ連携ポータル):「みんながつながる社会」というポータルサイトを開設し、令和7年度は総PV 105,231、YouTube広告61.4万視聴、SNS総インプレッション約352万という実績。マイナビと組んで若い世代に「手話通訳という仕事」を可視化するアプローチは、これまでにない切り口かもしれません。
- 災害NPO・ボランティア団体等の登録制度に株式会社プラスヴォイスが登録:要配慮者への意思疎通支援(遠隔手話・文字通訳)を全国で担う事業者として正式に登録されました(令和7年10月20日)。災害時の手話アクセス確保という観点で重要な動きです。
- こども家庭庁「聴覚障害児支援中核機能強化事業」(206億円の内数):鳥取県「きき」(きこえない・きこえにくい子どものサポートセンター)を参考事例として、各都道府県・政令市での中核機能整備が進められています。
2. 読書バリアフリー法 ── 第二期計画スタートと成果の蓄積
令和7年3月に第二期基本計画(令和7〜11年度)が策定され、新たなフェーズに入りました。
目新しい・注目点
- 都道府県の読書バリアフリー計画策定率が100%に到達(第一期当初の55.3%から)。指定都市は85%、中核市は46.8%とまだ伸びしろがあります。
- 国立国会図書館「みなサーチ」が令和6年1月から公開:OCR処理による全文テキストデータが約347万点という規模に達しています。
- 特定書籍等のデータ提供実証調査の結果が明らかに:令和7年8〜12月の依頼323件のうち、データ提供あり110件/不可81件/未回答96件。「出版者で最終データを保有していない」「経費が捻出できない」「著作者の許諾が必要と考えている」などが提供不可の主な理由とのこと。データ提供の仕組みは制度としては動き始めたものの、出版社側の課題はまだまだ大きいことが浮き彫りになりました。
- 「りんごプロジェクト」が内閣府特命担当大臣表彰優良賞を受賞:学校図書館120館(渋谷区立学校全校、横浜市立学校)にりんごの棚の設置が広がっています。
- 経産省「アクセシブルなEPUB制作のためのガイドブック」(令和7年度)が取りまとめられ、令和8年度は普及・周知へ。教材・専門書など精度要求が高い分野への対応のあり方も調査される予定です。
3. 障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法
基本法的な位置づけの法律ですが、各省庁の取組には新しい動きがいくつかあります。
目新しい・注目点
- 総務省「デジタル・ディバイド解消のための技術等研究開発推進事業」令和8年度採択6件:株式会社フィート(音声感情可視化機能による聴覚障害者コミュニケーション支援)、ヤマハ(ラジオ番組のリアルタイム自動テキスト配信)、Ashirase(視覚障害者の移動支援)、早稲田大学(重度障害者向けAIスイッチアプリ)など、当事者ニーズに密着した研究開発が並びます。
- 電話リレーサービスの新サービス「ヨメテル」開始(令和7年1月23日〜):相手の声のみを文字にする片側字幕型サービスです。利用者数2.3万人、年間通話件数約44万件と、公共インフラとしての存在感が増しています。
- 内閣府「障害者による情報取得等に資する機器等の協議の場」第6回(令和7年10月20日):知的・発達障害に関する取組について関係団体ヒアリングが行われ、ようやくこの領域での具体的な議論の俎上に載ってきた印象です。
- デジタル推進委員等の取組(R8予算0.9億円):「デジタルアクセシビリティアドバイザー認定試験」との連携が新たに位置づけられました。高齢者・障害者支援のリテラシー向上を制度化する動きとして注目したいところです。
- 電子投票システムの汎用機対応検討:技術的にはタブレット端末等の汎用機の活用に向けた見直しが進められていますが、公職選挙法では紙の投票が原則とされており、特例法により地方選挙に限って導入可能な状態にとどまっています。アクセシビリティの観点からも、制度面の見直しがどこまで進むかがポイントになりそうです。
- 学習者用デジタル教科書の標準仕様検討開始(令和7年度補正予算1億8,900万円・新規):現状の「教科書代替教材」という位置づけから、教科書そのものの標準仕様としてデジタル形態を位置づけるための検討会議が新設されました。中教審WGの審議まとめを踏まえた動きで、教材アクセシビリティの観点からも重要なステップになるかもしれません。
議連での質疑応答
当日の質疑応答では、以下の3点について質問し、各省庁から回答をいただきました。

※議員や他団体からの質疑応答もありましたが、割愛いたします。
Q1. 生放送における字幕付与の拡大について
生放送へのリアルタイム字幕付与が進んでいることを非常に心強く感じています。一方で、技術的・コスト的な制約から依然として字幕のない番組も多いのが現状です。今後、生放送を含めた情報アクセシビリティの制限をさらに緩和・拡充していくための具体的なロードマップや支援策はあるでしょうか?
→ 総務省回答:現時点の100%には生放送の数字も含まれているとの回答。
(補足:別のWebサイトの注釈には「生放送は除外」と書かれているケースもあり、回答内容は必ずしも正確ではないように感じました。総務省指針における「対象とした放送番組」の範囲を、改めて確認しておく必要があるのではないかと思います。)
Q2. アクセシビリティ評価ツールの普及について
情報アクセシビリティ向上を目的とした評価ツール(VPATなど)がありますが、これを官民問わず広く推奨、あるいは標準化していく方針はありますか?
→ 経済産業省回答:規格については民間企業向けに啓発を進めており、ご意見は参考までに承る、とのことでした。
Q3. デジタル教科書のアクセシビリティについて
デジタル教科書の導入が進む中で、音声読み上げ機能の普及状況と、動画コンテンツにおける字幕付与の義務化・標準化の現状について教えてください。
→ 文部科学省回答:現在国会にて審議中の状況であり、具体的な施策の検討はこれから。いただいた意見を参考にさせていただくとのことでした。
全体を通しての所感
3法それぞれの進捗を一覧してみると、手話施策推進法の施行後1年弱で、各省庁の取組が一気に具体化してきていることが印象的でした。特に教育現場(学校・大学)における手話アクセスの位置づけと、若年層の意思疎通支援者確保の二つは、これまで手薄だった部分への明確なテコ入れと言えるのではないでしょうか。
一方で、読書バリアフリー法における出版者からのデータ提供の停滞や、情報アクセシビリティ法における知的・発達障害領域の議論の遅れなど、課題もはっきり可視化されてきている気がします。
加えて、地域格差や各施策間の濃淡が目立ってきていることも印象に残りました。例えば、読書バリアフリー計画の策定率一つを取っても、都道府県は100%に達した一方で中核市は46.8%にとどまっており、聴覚障害児支援の中核機能整備も自治体ごとに進展に差があります。同じ法律のもとにあっても、現場での実装には濃淡があるのが現状ではないかと感じました。
また、ある程度進んできた施策の中にも、技術・コスト・法律上の制約(例えば公職選挙法による選挙関連のアクセシビリティの制約など)を理由に頭打ちになっているように見える領域があります。支援技術や支援体制自体は着実に進展しているにもかかわらず、それに合わせた制度や運用のアップデートが追いついていない部分は、引き続きフォローアップして、徐々に改善していくべきではないかと感じました。
3法の真価が問われるのは、制度の整備そのものよりも、現場での実装と当事者の声の反映の度合いにあるのではないか、と感じます。今後の動向を引き続き丹念に追うとともに、必要な場面では当事者の声を届けていきたいと考えています。
(文責:伊藤芳浩 IGB理事長(DPI日本会議 特別常任委員))
寄付する