電話を発明したグラハム・ベルの妻と母が耳の不自由な人であったことは日本ではあまり知られていません。電話という文明の利器が本来、聴覚障害者のためにこそ研究開発されてきた道具であるにもかわらず、発明後140年たった今もなお、日本の多くの聴覚障害者が便利な電話サービスを利用できていなのはなぜでしょうか?「予算がない」という理由は説得力がありません。

日本よりも人口の少ない国が行政と電話会社が連携して実施しています。OECD加盟国の中でリレーサービスのない国は日本だけです。その理由は「求める声が小さかった」あるいはそも「リレーサービスが知られていなかった」からだと考えています。

40年前に電話サービス会社で働いていたころ、会社が聴覚障害者のためのファクスと電話のリレーサービスをはじめました。利用者からは大変喜ばれましたがましたが、「耳が聞こえないと電話が使えない」という当たり前のことに衝撃を受けました。またファクスを購入しても使い方がよくわからない人もいました。

老テク研究会の「情報機器を購入しても使い方がわからないので使えないという人に使い方を紹介するボランティア活動」は、そこから始まったのかもしれません。

欧米では人が介在するリレーサービスがあることを知り、電公社民営化の時に米国のサービス現場を視察しました。聴覚障害者だけではなく、英語の話せない米国のためにスペイン語と英語のリレーサービスもありました。米国のリレーサービスは、法律によって提供が電話会社に義務付けられ、電話利用者から広く、薄く資金を集めを集めることが認められ、地域の女性たちや外国人に多くの雇用と企業の収益をもたらしています。聞こえない若い人はもちろん、高齢で電話を使えなくなってきた老親と会話をしたいという、離れて暮らしている人たちからも喜ばれていました。

日本で公的電話リレーサービスの理解と実現を遅らせてきたのは「サービスそのものが理解されにくい」ことも理由のひとつではないかと総務省の委員会や老テク研究会のセミナーでもくりかえしご紹介してきました。

多様な情報端末やサービスが登場し、電話リレーサービスのありかたもさまざな時代です。スマートフォンの普及で、電話サービスは「電話会社におまかせ」から「自分で設定して利用する」時代になりました。高度化している情報技術を活用するための意識改革が求められます。

超高齢社会の日本において、80歳まで生きることができたら、電話の声が聞き取りにくなるのは自然なことなのです。誰もが、便利な情報通信サービスを利用できるよう、共助のしくみができるようこれからも取り組んでいこうと思っております。NPO法人インフォメーションギャップバスターを中心として活動しておられる多くの方の電話リレーサービス普及のための活動を心から応援しています。

老テク研究会事務局長 kondo近藤則子
米国留学後、東京の情報サービス会社に勤務。1992年より老親を介護する友人と老テク研究会を開始。国内外の高齢者のパソコンボランティア活動「シニアネット」の創設や相互交流を支援している。2011年より総務省情報通信審議会委員。情報アクセシビリティ、字幕放送等の委員会を担当。現在は技術政策委員会、情報政策委員会、2020年にむけた社会のICT化懇談会等に参加している。

【掲載記事:ITpro】電話リレーサービス―欧米で普及する情報アクセシビリティ向上策 

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