【ご報告】川崎市立川崎病院に手話通訳を専門とする職員を配置する件の陳情
7/23(月)に月本琢也川崎市会議員(麻生区・無所属)に特定非営利活動法人川崎市ろう者協会(以降、川ろう協)理事(手話対策部)吉田将明(*)と特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター(以降、IGB)理事長 伊藤芳浩が「川崎市立川崎病院に手話通訳を専門とする職員を配置する件」について、陳情してまいりました。本件は、川ろう協およびIGBが医療現場におけるコミュニケーションバリアの解消のために連携して取り組んでいる活動の一つとして行われました。
*:IGB理事を兼務
月本議員からは、川崎市では、東京2020大会に向けて「かわさきパラムーブメント」を掲げ、誰もが暮らしやすいまちづくりに向けた取組を進めており、聴覚障害者のようなマイノリティ(小人数)についても同様に暮らしやすい社会を作っていく必要があります。特に今回の要望は命や健康に関わる大切な問題であり、前向きに取り組んで行きたいというコメントをいただきました。
陳情の内容は以下の通りです。
【陳情の趣旨(要旨)】
川崎市立川崎病院に手話通訳を専門とする常勤職員の複数名配置を要望します。
【陳情の理由】
我々聴覚障害者は、川崎市の手話通訳派遣事業の手話通訳派遣制度で手話通訳を利用することができますが、原則1週間前までの予約が必要です。急な受診時や入院時には利用が困難な状況の結果として、病院でのコミュニケーションが十分に行われないことによる、インフォームド・コンセントが不十分、受療抑制が起こるなどの問題が生じ、健康格差につながっています。これらを踏まえて下記の①〜⑤の理由により、川崎市内の公立病院のうち、最も規模が大きく地域の基幹病院である川崎市立川崎病院へ病院内手話通訳者設置を陳情するにいたりました。また、配置の際には、手話通訳の専門性を考慮して、川崎市の手話通訳派遣事業を委託している川崎市聴覚障害者情報文化センターとの連携を要望します。
①2016年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」である障害者差別解消法により、病院などの医療機関が音声情報を目で見てわかる情報に変える情報バリアフリーを推進した合理的配慮が求められています。
②川崎市の手話通訳派遣事業の年間手話通訳派遣数は3489件のうち、病院などの医療に関する件数が2096件で全体の約60%を占め、最も多い割合で、全国各地の報告でもほぼ同様の結果となっています。
③受診経験のある194名の聴覚障害者を対象にした医療機関受診に関する調査で、「受診時の手話通訳制度に求めること」の結果、64%(125名)が「院内手話通訳者の設置をして欲しい」と回答が認められています。
④病院が手話通訳者を設置することにより聴覚障害者が従来よりも積極的に受療行動し、一方で手話通訳派遣制度があっても手話通訳者が設置されていない状況では、聴覚障害者はコミュニケーションの障害をもっているために受療抑制が存在するとされています。
⑤川崎市と同じ政令指定都市である札幌市、大阪市、広島市には手話通訳者設置病院があります。これらの病院は手話通訳者設置後、手話通訳件数が増加しています。
病院内に手話通訳者を設置することで、手話通訳者が関われる範囲が格段に広がります。その例として、病院職員としてカルテ参照による情報把握、医師や看護師などの医療従事者と連携しやすくなることで、より質の高い手話通訳が可能になります。他にも手術室内の麻酔がかかるまでの手話通訳が可能になるなど、手話通訳派遣制度では対応が難しい場面での手話通訳も可能になります。また、病院内に手話通訳者を設置することは聴覚障害者だけではなく、医療従事者側もきちんとしたコミュニケーションが可能になることで、より安全な医療提供が可能になり、それぞれの立場において大きな恩恵があります。
これらのことを踏まえて、「川崎市立川崎病院に手話通訳を専門とする職員を配置する件」について、関係部署に働きかけていただくよう、どうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
②事業報告書. 川崎市聴覚障害者情報文化センター, 2016
③阿部忍. 医療機関における聴覚障害者の手話通訳支援に関する研究. 筑波大学, 2014.
④北原照代, 峠田和史, 渡部眞也他. 聴覚障害者に受療抑制はあるか-手話通訳者を設置した病院の来院状況から. 社会医学研究, 14, 103-107, 1997.
⑤聴覚障害者の医療に関心を持つ医療関係者のネットワーク. “手話通訳設置医療機関リスト (参照 2018-7-23).