山本博司議員にお会いして電話リレーサービスの公的サービス化をお願いしてまいりました
6/12(月)に、参議院議員の山本博司議員にお会いして、「電話リレーサービスの公的サービス化」をお願いしてまいりました。
「電話リレーサービス」は、以下のような仕組みで、通訳オペレーターを通して、連絡先とやりとりをする仕組みで、日本財団の厚意によって試行サービスとして提供されています。
しかし、試行サービスが故の課題も以下の通りいくつかあります。
- 使用者数には限界があり、24時間365日使うことができない。
- 110番、119番などの緊急電話をかけることができない。
- クレジットカード紛失などの本人確認として利用することができない。
今回は、「電信電話会社は電話リレーサービスの提供を義務化し、全ての者に公平な通信・通話環境を整えるようにしてください」という点を陳情して参りました。以下は陳情書の一部の抜粋です。
2011年度の厚生労働省の調査によれば、障害者手帳を所持する聴覚障害者は全国に32.4万人とされています。しかし、高齢者など聞こえに問題があるにも関わらず、実際には障害者手帳を持っていない場合が非常に多い状態です。なお、日本補聴器工業会が2012年に行った調査によれば、日本全国の難聴者数は1390万人と推定されており、潜在的な問題の大きさは障害者手帳所持者の数だけで論じることはできません。聴覚障害者はその障害が外から見てわからないために社会から認識、理解されにくく、日常生活や職場において多大な困難を日々感じています。電話の利用もそのひとつで日常生活や社会参加への大きな障壁になっています。特に、聴覚障害者は電話を活用したリアルタイムの双方向コミュニケーションが十分にできないため、生活や仕事面で必要な情報を得ることができなかったり、得ることができても健常者以上の時間を要したりする問題が生じ、人生のあらゆる場面で格差が生じています。そのような情報格差を解消する一つの手段である「電話リレーサービス」に関して、次のような事項が指摘されています。
電話リレーサービスは聴覚障害者の電話利用を可能にする仕組みです。聴覚障害者と電話の相手先(聴者)をリレーサービスセンターにいるオペレーターが、文字や手話と音声の通訳をすることにより、電話で即時双方向につなぐサービスです。パソコンやスマートフォンのチャット機能などで文字を使って行われる文字リレーサービスとテレビ電話などで手話を使って行われるビデオリレーサービスがあります。
国立研究開発法人情報通信研究機構による情報バリアフリー事業助成金により、電話リレーサービスなどに対する助成がなされています。しかし、助成が十分でなく、結果として電話リレーサービスを利用可能な会員数が限定されていたり、電話リレーサービスの利用可能時間が限定されていたりしていて、十分なサービスを享受できる状況ではありません。
また、ヨーロッパ15カ国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、タイ、合計すると世界の21カ国において、すでに全員がいつでも利用できるような状況になっております。日本では、前述の通り、これらの国と比べてかなり遅れている状態です。
平成28年4月より施行中の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の一環として、電話リレーサービスの普及に取り組んでいただき、日本としましても世界の各国と同等に、いつでもどこでも使用できる電話リレーサービスを提供することが望ましいと考えています。
現在、地域格差解消のために、総務省ではユニバーサルサービス制度がありますが、ハンディがあるものの格差を解消するための同等の制度を設けることで、財源確保が可能になると考えています。日本財団発行「提言 聴覚障害者が電話を使える社会の実現を!」に記載の試算によれば、1円/回線の負担で十分に賄えるとのことです。電信電話会社はこの財源を元に電話リレーサービスを開始するのが望ましいと考えています。なお、国際電気通信連合の部門の一つのITU-Tは、2014年11月のModel ICT accessibility Policy Reportの 10~11ページにおいて、『ユニバーサルサービスの対象に障害者を含めるべきである』と勧告されています。また、第61回国連総会において採択された障害者権利条約の第九条 施設及びサービスの利用可能性においても障害者が、他の者と平等に、通信サービスへのアクセスができることを確保するための適当な措置をとると書かれています。
また、日本財団では、2013年9月から無料で試験サービスを提供するモデルプロジェクトを全国向けに開始し、利用登録者は5,000人、利用回数は一ヶ月10,000件を超えています。2014年1月に実施したアンケートによれば利用者は電話リレーサービスを高く評価しています。「今後も電話リレーサービスを利用し続けたいか?」との設問に、「とてもそう思う」、「そう思う」と答えた割合は95.3%にものぼり、ほとんどの利用者は電話リレーサービスの有用性を実感し継続を望んでいます。利用者は電話リレーサービスの有用性を二つの面でとらえています。ひとつは「わざわざ店にいかなくも予約ができる、用事が一度で片づく」といった「利便性」です。これは、第一生命経済研究所が2009年に行った「障害者等の対面・非対面窓口の利用実態」調査において、聴覚障害者のサービス利用に関する問題として最も多かった「電話で連絡できないので、仕方なく窓口や店に行った」に対して電話リレーサービスが解決の手段になり得たことを示しています。もうひとつの有用性は、これまで家族や友人に気を使いながら電話を依頼していたことが、自らが主体となって一人で電話を掛けられるようになったという「自立」が出来たことです。アンケートにおいても、「家族や周りの人に頼らずに、より自立した生活ができる」との質問に、「とてもそう思う」、「そう思う」と答えた割合は94.0%にのぼりました。「利便性」も「自立」も聴者にとっては普段の生活でごくあたり前に出来ていることですが、これまで聴覚障害者には難しかったのです。職場における電話の必要性はいうまでもありませんが、今回のプロジェクトでは、聴覚障害を持つ自営業者から「電話ですぐに在庫確認できるようになった」、あるいは大学の職員から「仕事電話リレーサービスの有用性の幅が広がり周囲からの評価があがった」などの声が寄せられています。聴覚障害者は電話を使用できないため、職場でも不利な立場におかれていますが、電話リレーサービスを仕事で活用することは、本人の能力をフルに発揮するだけにとどまらず、社会全体の生産性向上にもつながります。また忘れてならないことは、電話リレーサービスは決して聴覚障害者だけに有用なのではないということです。聴覚障害者が電話をできるということは、聴者から聴覚障害者に電話をかけられることでもあり、電話リレーサービスの有用性を享受するのは社会全体と言えます。
山本議員は、NPOインフォメーションギャップバスターの電話リレーサービスに対する取り組みをご理解していただき、「今後電話リレーサービスの公的支援実現に向けて、法整備も視野に、本年度から厚労省の予算が付いた制度の拡充など対応前進へ進めてまいります。」とのコメントをいただきました。
NPOインフォメーションギャップバスターは、情報バリア解消に取り組んでおり、生活や職場での電話を自由に使えないという重大なハンディを解消することは、3年以上に渡って取り組んでいる課題であり、今回を機に徐々に前進する一つの契機となることを心より願っております。
◆山本博司議員ブログ:4/26「電波利用料・ユニバーサルサービス制度(電話リレーサービス支援等)について」国会質問(総務委員会)