Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【ご報告】障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟総会出席~「手話推進法」ヒアリング会~

2024年7月16日(火)に「障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟」の総会が参議院議員会館で開催され、衛藤晟一会長からのご挨拶の後、議員立法「手話推進法案」に関する関係団体等からのヒアリングが行われました。

この議連は2019年に読書バリアフリー法を策定する時に設立された超党派の議連で、障害児者の情報コミュニケーションの推進に向けた施策の推進、必要な法律の法制化を行っていただいています。本総会は、多くの国会議員、障害者団体、関係省庁が集まり、機運の高まりを感じました。

出席

    • 議員:衛藤晟一参議院議員(会長・自民)、伊藤孝恵参議院議員(副会長、事務局長代理(兼務)・国民)、吉良よし子参議院議員(副会長・共産)、山本博司参議院議員(幹事長・公明)、滝波宏文参議院議員(幹事長補佐・自民)、今井絵理子参議院議員(事務局長・自民)、勝目康衆議院議員(自民)
    • 関係団体:全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、全日本中途失聴者・難聴者団体連合会、全国盲ろう者協会、日本手話通訳士協会、手話を広める知事の会、筑波技術大学、群馬大学、都民総合法律事務所 弁護士 田門 浩、インフォメーションギャップバスター
    • 政府関係:内閣府(障害者施策担当、防災担当)、こども家庭庁、総務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、参議院法制局

右から、今井絵理子参議院議員(事務局長・自民)、滝波宏文参議院議員(幹事長補佐・自民)、衛藤晟一参議院議員(会長・自民)、山本博司参議院議員(幹事長・公明)、伊藤孝恵参議院議員(副会長、事務局長代理(兼務)・国民)

各団体から出た主な発言は以下の通りでした。

  • 手話を法的に認知し、手話を用いた教育環境の整備が必要。特に、聞こえない子どもたちが自然に手話を獲得できる環境の整備が必要。
  • 聴覚障害者の生活向上と手話通訳者の社会的地位向上を目指し、手話通訳者の養成と雇用環境の改善が必要。
  • 手話教育の標準化と手話通訳者の体系的な養成プログラムの整備が必要。特に大学での手話教育の強化を提案。

 

NPO法人インフォメーションギャップバスターは、伊藤理事長と賀屋理事が出席し、以下の点を要望いたしました。

発言する伊藤IGB理事長


障害者差別解消法などの法律により、ろう者の社会進出が促進されていますが、あらゆる分野・場面で、手話通訳が用意されていないといった、多くの障壁が存在します。手話推進法は、より包括的で実効性の高いものが必要です。また、現代の技術進歩や多様なニーズに即した視点を踏まえた法律にする必要があります。

そのために、手話推進法は、以下の9点を考慮したものになることが望ましいです。

手話推進法に含めるべき項目

(1) 手話の法的地位の確立: 手話を正式なコミュニケーション手段として法的に認め、ろう者の権利として保障すること

(2) 手話通訳通訳士の国家資格化: 手話通訳士の待遇を改善し、認知度を上げるために、国家資格制度を導入すること

(3) 手話通訳の待遇改善: 手話通訳の支援を目的とし、手話通訳報酬に対する補助金を提供すること

(4) 手話学習機会の拡大:教育環境や労働環境における情報格差を解消するために、教員養成プログラムやジョブコーチなど手話使用者とコミュニケーションをする関係者の養成カリキュラムに手話の習得を含めること

(5) 手話通訳の専門性向上: 医療、司法、教育、外国人向けなどの専門分野において、手話通訳育成プログラムに対する補助金を提供すること

(6) 手話学習環境の整備:ろう児や聞こえる親が手話を学ぶことのできる環境の整備、および、それを担う手話支援員の養成を行うこと

(7) 情報アクセスの平等化: 政見放送やテレビ放送のうち公益性の高い番組(ニュースなど)の手話放送を必須化し、ろう者が平等に情報にアクセスできるようにすること

(8) ICT技術とAI技術の活用: 遠隔通訳やアバター通訳を人手不足を補うために積極的に活用しつつ、ろう者の人権侵害とならないよう、当事者の意見を十分に反映すること

(9) ろう通訳の資格化:ろう通訳者の専門性を高めるために、資格制度を導入し、ろう通訳者の質を向上させること


(4) 手話学習機会の拡大の補足

初中等教育機関における手話通訳の導入率が極めて低い(10%台)ことが明らかになっています。ろう児が手話通訳を利用したり、教員自らが手話を使用してコミュニケーションすることができるようにしたりすることで、インクルーシブ教育環境においてもろう児が等しく教育機会の均等を図ることが重要です。手話通訳に関しては、利用する際の補助金や助成金が必要です。教育現場で手話通訳を設置したり、手話のできる教員を配置したりすることで、ろう児が適切な教育を受けられる環境を整え、教育機会の均等を実現します。

聴覚障害者の平均給与は聴者の平均給与の67%にとどまっています。この主な原因は、業務上必要な情報が十分に伝わっていないことによる情報格差があり、これを解消するためには、業務上重要な場面において、手話通訳を利用しやすくするための補助金や助成金が必要です。現状の障害者介助等助成金には、年数制限があるため、これを改善し、継続的な支援が可能となる制度が必要です。

また、職場と聴覚障害者の橋渡しを担う重要な役割を果たしているジョブコーチの中には手話ができる者が少なく、手話の習得が課題になっています。

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