【イベントレポート】主催:デフエンターティメント企画 「 電話レーサービスの現状と課題を知ろう! 」
2020/1/17(金)の夜に、デフエンターティメント企画主催で電話リレーサービス講演を実施いたしました。約30名の参加があり、約8割の方が聞こえる方でした。本レポートでは、講演の様子を報告するとともに、聴講しての所感を記載いたしますので、よろしければご覧ください。
主催:デフエンターティメント企画
日時: 2020年1月17日(金)
時間: 19:00~21:00(受付: 18:30~)
会場: 港区勤労福祉会館 第一洋室
講師:三原毅(NPOインフォメーションギャップバスター電話リレーサービスプロジェクト担当)・吉田麻莉(NPOインフォメーションギャップバスター インターンシップ)
■講演に入り、三原さん自己紹介。
「ダスキン研修でアメリカへ視察したときにアメリカの電話リレーサービスにショックを受けた。電話リレーサービスで聾者は色々なことができ、出来ることが広がり、聾者にとって気付きがあり、向上があると思う。日本もアメリカ並みに進化していくのでは。日本も追いつきたい。」
1990年代から現在までの日本での聾者に向けた通信の公的インフラについて説明。
◆なぜ電話リレーサービスは必要なのか。不可欠である理由について、ないと困ることを4点にまとめて挙げる。
1.緊急連絡ができない / 急ぎの注文をしたいのに直前は電話のみ。キャンセルしたのに直前は電話のみ。カード停止したい、再配達の依頼など。
2.リアルタイムに会話ができない / 現在はFAXやメールがあるから十分なのではないかと思う方がいるかも知れないが、違う。メールは文字だけなので気持ちが分からない。ホテルの予約も細かい部分(洋室or和室・部屋の大きさ等)がその場で分からずスムーズでない。
3.電話しかないところに連絡できない / 高速道路上でロードサービスに連絡できない。
4.本人確認ができない / カードの利用停止。アパートの契約など。
この「電話が使えない課題」を解決するために必要なのは、手話通訳だろうか?聴者だろうか?→電話リレーサービスである。
■電話リレーサービスのしくみについての説明。
現在あるもの。①日本財団がサービスを提供中。②電話リレーサービス事業者が提供。③企業が電話リレーサービスと提携して提供するケース(お客様センターの中に手話通訳が居る)。④会社の中に手話通訳が居て社外の聴者から電話があった場合社内各所のオペレーターにつなぐ
オペレーター数 50名、対応はAM8:00-PM21:00、利用者8900名、件数27,000件/日、分数85,000分/月。サービス業者が複数在ることで競争化しサービス向上につながる。
■JAL遠隔手話通訳サービス導入例について
■au手話通訳サービスについて(三原さんがつくった)
■年配の方は様々な経験をもっていると思う、FAXを送るのに3分かかった。
電話リレーサービスを使って良かったことは。時間を有効に使うことができる、今まで諦めていたことが出来た、聴者の彼女とのやり取りを相手の家族に見られてしまうこともない。電話リレーサービスのオペレーターには守秘義務があるので心配がない。
■インターンシップ:吉田さん
自己紹介「電話リレーサービスのヘビーユーザー(二日に1回、月に20~50回利用)。NPOインフォメーションギャップバスターの他の団体でも活動している。」
電話リレーサービスを使うきっかけは、既に終了しているLINEリレーサービスが無料で行われていることを知り登録したこと。使ってみての感想としては、手話は当たりハズレがある(担当するオペレーターによって、自分の手話表現が通じやすい人とそうでない人がいる)。文字の方が情報の齟齬がない。聾者としての利点は、聞こえる人が電話できない状況(話せないような電車の中・大勢でいる中)でも利用することが可能である点。
電話リレーサービスを使うことによる効果として、自分自身のことばで、リアルタイムで直接やりとりでき、決定権を自分自身で持てること、着信の折り返し電話を電話リレーサービスで行うことができることを挙げていた。
■最後に、三原さんから世界における電話リレーサービスの現状と日本での課題について。
世界で初めての電話リレーサービスは1966年アメリカ。アジアでは2008年の韓国が最初である。日本はまだで、日本財団における試行でサンプルデータを貯めながら試験中。24時間対応の国は少ないので日本に期待している(実際の日本における遭難時の対応について実例を示す)。
公的インフラとしてスタートするときには、誰でも使いやすい内容にしなくてはならない。
また「聞こえる人」にもメリットがあることをアピールすることが必要。
今の課題は4つ。 ①24時間いつでも・誰でも・いつまでも、使えない。2021年3月31日で日本財団の電話リレーサービスが終了する。2021年4月から国が実施予定にしているが予定である。 ②制度が未整備。 ③社会の認知が不十分。 ④聴障者が電話リレーサービスを使わない。機会がない(与えられていない)、使い方を知らない、電話リレーサービスを知らない。 聴障者の0.03%しか利用していない。
全国の消防署の17.5%が導入しているアプリ “ NET119 ” 。スマホが必要だったりダウンロードが必要なため、高齢者に使いにくかったりする。しかし何故アプリが良いのかというと、GPSが付いており居場所を特定することが出来るからである。
■質疑応答
Q.リレーサービスのかけた相手には番号が表示されるのか?
A.守秘義務により表示はされない。単にリレーサービスの業者を介入する方法なので業者から開示するということはない(三原)
Q.文字でのやり取りはどのような表示なのか?
A.要約はしていると思う。聞こえる友人に聞いたところ実際は挨拶など丁寧な言葉があるが私の場合は業者にもよるかもしれないがないので要約されていると思う。(吉田)日本財団/電話リレーサービスのワードを入れ検索してみてください(三原)
Q.リレーサービスをすでに導入している国を参考にしていますか?
A.具体的には総務省が進めている。もちろん海外の前例を調べている。(三原)
Q.アメリカなどスムーズに導入できているのは国民性の違いなどでしょうか?
A.アメリカの場合はADA法がある。日本は手話通訳制度としてはトップレベルなので優しい国民も関係している。(三原)
Q.オペレーターの責任範囲は?ニュースにあった救出の位置情報の開示などは特例ではないか?
A.基本的には緊急の場合は対応しない。(三原)
【所感】
私自身は電話を利用することができる。事務経験があり、思えば電話による相互認識の齟齬が起きないよう(耳からの情報に弱いという)苦手を逆手に取り間違いのない対応に努力できた。6年前に突発性難聴によりわずかに右耳が聞こえなくなるだけで不便が起こることを知り手話習得を試みる。そこで聴者と比べ聴障者が電話を利用することに圧倒的に消極的なことにショックを受け、電話リレーサービスは公的インフラとして不可欠である、と思い会合へ参加したことが「NPOインフォメーションギャップバスター」との出会いのきっかけである。
今回の講演では、具体的に公的インフラにしてくための経緯や道のりを知り、「誰にとっても使いやすいもの」にするために細かで複雑なことが行われている、その大筋を把握することができた。
また利用の経験談から、電話リレーサービスにおいて、リアルタイムに感情や状態を交えてコミュンケーションする手話オペレーターは不可欠だが手話言語の成熟も必要という課題と、文字情報は情報の齟齬がなく確実であるのは聴者においても同じであることを感じた。
消防署との連絡 “ NET119 ” は名前だけ知っていたがアプリであるのを今回知った。GPSによる居場所の特定が速いので、連絡の選択肢が多い者として、緊急時いち早く駆けつけてもらえるアプリの登録【も】現状の課題を乗り越え、命を守るためにぜひ登録した方が良いのではと思う(聴者は利用できないのでは?)。
聴障者の0.03%しか電話リレーサービスを利用していない、というのは衝撃であった。私は認知あれども利用したことがまだないので、社会の認知が不十分であることを痛感している。今後とも電話リレーサービスの普及を願い、微力ながらその活動を行って行きたいと思う。
文責:大貫 恵子(NPOインフォメーションギャップバスター会員、聴者・広汎性発達障害・・・耳からの情報に弱い等)
【所感】
三原さん(本企画の講師)のお話から、電話リレーサービスの現状はもちろん、今急務の課題は何なのか、その解決策、と色々なお話が聞けて大変勉強になりました。
驚いたことに三原さんによると聴覚障害者の中で電話リレーサービスを使っているのは0.03%とのこと。知っていても利用しにくい、信用できるかどうか不安であるなどいろいろな理由があるかと思いますが、ますます啓発していかないといけないと思いました。
吉田さんのお話からは、日常生活の中で使っているヘビーユーザーとして、身近なお話を聞けました。職場の先輩や家族に頼んだ場合、個人情報がバレるからというだけじゃなく、「自分の言葉で伝えられたかどうか」という別の意味での不安もあったという話は合点がいきました。
文責:石川 さと(NPOインフォメーションギャップバスター インターンシップ、日本社会事業大学3年生)