【ご報告】「silent」の放送のあり方についての意見書提出のお知らせ
NPOインフォメーションギャップバスターは、2022年12月27日に、下記の 【「silent」の放送のあり方についての意見書】を「フジテレビ」と「放送倫理・番組向上機構(BPO)」宛に提出いたしました。
2022年12月23日~2022年12月27日に、SNSなどを介して、賛同を募ったところ、賛同団体:17団体 賛同個人:134名となり、この賛同をもって、意見書をお伝えしました。賛同の受付は終了しました。
短期間にも関わらず、多大な賛同をいただきまして誠にありがとうございました。
意見書の提出にいたる経緯など詳細については、伊藤理事長の下記のブログをご参照ください。
https://note.com/besus/n/na5038d19643d
「silent」の放送のあり方についての意見書
2022年12月27日
NPO法人インフォメーションギャップバスター
2022年10月6日からフジテレビ系「木曜劇場」枠にて放送された「silent」というドラマ番組は、主人公 青羽 紬と佐倉 想のラブストーリーです。想は、指定難病とされている「若年発症型両側性感音難聴」により失聴します。想の姉である井草 華は、結婚して実家を離れ、2歳の息子・優生(ゆうき)がいます。2022年12月8日(木)に放映された第9話では回想シーンとして、華がこれから産まれてくる息子の耳が聞こえるかどうかを気にしている様子、障害がなく喜ぶ様子が描かれています。そして、この点が問題ですが、息子の名前は「優生(ゆうき)」であると字幕および番組公式ツイッター等で表示されました。
現在、全国各地で、1996年改正前の優生保護法(以下「旧優生保護法」という)の下で「障害・疾患」を理由に優生手術(子どもを作ることをできなくする手術)を受けさせられた被害者に対する賠償を求める裁判が起こされ、違憲判決が続出。国会でも一時金支給法が制定され、その前文には「国がこの問題に誠実に対応していく立場にある」と表明されています。耳の聞こえない夫婦が優生手術や妊娠中絶を受けさせられた事例も多数あります。
今回出てきた「優生」という名前が名づけの意図などの説明もなく、子どもへの障害・疾患等の遺伝をテーマとしている流れで放送されたことは、旧優生保護法の被害者はもちろん、障害・疾患がある人、家族、関係者などにとって、「優生保護法」を想起させ、人間としての存在、人間としての尊厳を否定されたと感じさせるものです。これは決して過去のことではなく、障害や疾病による命の選別や効率重視社会における不平等という形で現在も存続している課題です。そしてこの表現は、日本民間放送連盟 放送基準の「人権」「表現上の配慮」に抵触していると言わざるを得ません。なお、一般的に、優しく生きるという意味等で名付けられた「優生」という名前、および「優生」という文字が付く名前への批判ではありません。本番組の「障害・疾患の遺伝」を懸念している流れのなかで出てくる「優生」という名前のみを問題視しています。
▼日本民間放送連盟 放送基準
https://j-ba.or.jp/category/broadcasting/jba101032
どのような経緯で「優生」という名前になったのかは計りかねますが、とてもセンシティブな課題であり、影響力の大きいテレビ放送では取り扱いに十分な配慮をしていただきたく存じます。
最後になりますが、多様性ある聴覚障害者(ろう者、難聴者、中途失聴者)、聴者の友人や家族のそれぞれのスタンスや生き方、手話・文字等によるコミュニケーションのディテールを積み重ねることにより、言葉で伝え合うこと、愛、友情、やさしさを伝えようとするドラマそのものは共に生きる社会を目指す上で、大変意義があると考えており、ドラマそのものを否定するつもりは全くありません。今回の意見書をきっかけに、建設的な対話・協働ができることを心から願います。
【連絡先】NPOインフォメーションギャップバスター事務局 staff@infogapbuster.org
<賛同団体:17団体>
- 認定NPO法人 DPI日本会議
- DPI北海道ブロック会議
- NPO法人 ちゅうぶ
- 特定非営利活動法人 人工聴覚情報学会
- NPO法人自立生活センターSTEPえどがわ
- 特定非営利活動法人 こらーるたいとう
- 一般社団法人 撫子寄合
- 一般社団法人 手話秋田普及センター
- 一般社団法人 ありがとうの種
- 聞こえないきょうだいをもつSODAソーダの会
- 手話で育てたい親の会
- Social Connection for Human Rights(SCHR)
- 自立生活センターリングリング
- のんびりしゅわ処しゅわわん
- だれかが なにかを いうデモ
- スナック社会科
- バリアフリー舞台研究会
<賛同個人:134名>
(個人名は割愛させていただきます)