【聴覚障害者向け】職場ハラスメントの対策パンフレット完成記念会見
こんにちは!特定非営利活動法人 インフォメーションギャップバスター(略 IGB) 聴覚障害者雇用・労働ハラスメント・差別調査チームです。
昨日、弊団体は厚生労働記者会において、聴覚障害者向け職場でのハラスメント対策パンフレット完成記念会見を開催しました。
本会見では、パンフレットの企画を行ったIGB理事長 伊藤芳浩と、法律監修を行った労働者側の中西翔太郎弁護士(東京弁護士会、旬報法律事務所)、使用者側の櫛橋建太弁護士が出席し、パンフレットの内容、重要性、及び活用方法に関する説明が行われました。
会見の中では、社内でハラスメントが起きた際に重要な点として、以下の2点が強調されました。
① ハラスメントと思われる言動を受けた場合には、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのようにしたのか)を詳細に記録する
② いきなり弁護士や労働基準監督署などの「社外」に問題を持ち込むのではなく、まずは「社内での話し合い」を行う
①に関して…
労働者側の中西弁護士からは、①を適切に行うことは、労働者側が経験した、ハラスメントと思われる事例を的確に使用者側(企業側)に伝えられることにつながるとの解説を頂きました。
また、櫛橋弁護士からは、使用者側の意見として、労働者からの申し出を受けて実際にハラスメントと認定された場合、ハラスメント被害を申し出た労働者側の意見も聞きつつ、減給や転勤などの加害者側への懲罰を厳正に判断する際の一助となるとの説明を賜りました。
②に関して…
ハラスメントを受けた際は、信頼できる同僚や上司、社内窓口といった、社内での相談が効果的です。実際、職場ハラスメントを解決できた聴覚障害者のうち、約8割の方が社内での対応が問題解決につながったと回答しています。
労働者側としても使用者側としても、外部が介入して二者間の関係性が拗れるより、内部で穏便に解決できた方が、双方にとってメリットであるとの説明がなされました。
しかしながら、社内でも解決できない問題の場合は、積極的に外部機関や弁護士に相談するといった対応も推奨されていました。
質疑応答の際には、各報道機関の御担当者様より、パンフレットや職場ハラスメントの実態に関して、より深いレベルでのご質問を賜り、充実した濃い記念会見となりました。
以下に、質疑応答の一部抜粋を掲載致します。
Q.聴覚障害特有のハラスメントには何があるか。
A.「筆談や手話通訳の要望が無視される」・「聞こえないことを理由に、勝手に仕事量を減らされる」「『聴覚障害者と同じ給料なんて納得できない』と言われる」などのハラスメントが報告されています。
Q.実際に裁判になっているケースがあれば教えてほしい。
A.合理的配慮が争点となった裁判は珍しいですが、事例は存在します。守秘義務があるため、詳しくは伝えられませんが、結果的には、労働者と使用者の和解となり、手話通訳や、社内での手話講習会の開催などが約束されました。
労働者側は障害特性や必要な配慮を詳細に説明し、使用者側は、障害を持たない人と同等に仕事に取り組めるようになるためにはどうすればいいのかを労働者側と共に考える、といった、双方の歩み寄りが重要です。
ハラスメントのない職場環境は、労働者の身体的・精神的な安全が担保されるだけではなく、それによって労働者のパフォーマンスが向上して結果的に使用者側(企業)の利益率向上にもつながります。
IGBは、このプロジェクトを通じて、ハラスメントや差別の減少、職場での情報保障の促進、そして全員にとって公平かつ快適な職場環境の実現へと努力して行きたいと考えています。
皆さまのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター
聴覚障害者雇用・労働ハラスメント・差別調査チーム