【ご報告】総務省への公職選挙法に関する情報格差解消の要望提出
先日(2024年4月17日(水))に開催された参議院の「国民生活・経済及び地方に関する調査会」に、伊藤理事長が参考人として出席いたしました。その際、委員から選挙に関する情報バリアフリーについての質問がなされました。
その際に出てきた意見を改めて、総務省の選挙担当の方と議論する場を調査会会長の福山哲郎参議院議員に設けていただき、2024年6月18日(火)に参議院議員会館 国民生活・経済及び地方に関する調査会 会長室にて行いました。
NPO法人インフォメーションギャップバスターからは、議論結果を踏まえて、以下の要望を6点提出し、それぞれ総務省から回答をいただきました。
1. 政見放送について
【要望①】
現状、政見放送については、情報保障(手話通訳、字幕)に一部制限があり、公平に情報が伝わらない状況があります。今後、「障害者差別解消法」や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の観点から、制限を撤廃していただきたい。
議院種別 | 衆議院 | 参議院 | ||||
選挙方式 | 小選挙区 | 比例 | 選挙区 | 比例 | ||
放送方式 | スタジオ録画 | 持ち込み
ビデオ |
スタジオ録画 | スタジオ録画 | 持ち込み
ビデオ |
スタジオ録画 |
手話 | × (※) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
字幕 | × | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
◯:付与可 ×:付与不可
【総務省回答①】
・手話通訳について、衆議院の小選挙区のスタジオ録画は現状不可となっています。(※) 全国で必要な数の手話通訳士を確保できるかが課題となっていましたが、関係機関と協議しながら可にする方向で調整しています。また、政見放送における手話通訳士の確保に資するため、総務省では政見放送手話通訳士研修会を一般社団法人手話通訳士協会に委託して、年に数回各地で実施しています。
・字幕については、NHK側で原稿作成や内容確認等のための体制構築等が参議院比例以外では現状では難しいと聞いています。
【要望②】
政見放送における手話通訳設置は「障害者差別解消法」や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の観点から必須であり、手話通訳費用は選挙管理委員会が負担することを含め、候補者や各党に対してもっと啓発していただきたい。
【総務省回答②】
政見放送への手話通訳付与の制度について機会捉えて周知に努めます。
2. 立会演説について
【要望③】
立会演説で屋外の場合は字幕対応不可(屋内の場合は字幕対応可)となっているが、「障害者差別解消法」や「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の観点から、今後、制限を撤廃していただきたい。
【総務省回答③】
公職選挙法の考え方として、字幕(映写等の類)も選挙運動用ビラなどと同様に文書図画に含まれるものであり、選挙運動のために使用する文書図画については、公職選挙法で定められたものに限り、頒布や掲示ができることとされています。屋外の演説会場における字幕表示(映写等の類の掲示)は現行の公職選挙法上できないものとなりますが、選挙運動のあり方については、選挙制度の根幹に関わる事柄であり、各党各会派において御議論いただくべきものと考えます。
3. 投票所のバリアフリーについて
【要望④】
投票所での情報保障およびコミュニケーション支援のために、手話通訳者および要約筆記者を配置することは認められているが、事前予約制となっていることを知らない人が多い。手話通訳者および要約筆記者が必要な方は、事前にお申し出くださいなどの文面を選挙のお知らせに明記していただきたい。また、実際にやっている好事例を「障害のある方に対する投票所での対応例について」に追記していただきたい。
▼障害のある方に対する投票所での対応例について
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/senkyo/torikumi_senkyo/index.html
【総務省回答④】
投票所入場券又は投票所入場券送付用封筒に投票等に関する支援の問合せ先等を印刷している市区町村もあり、そうした取組について横展開に努めてまいります。
【要望⑤】
投票所での情報保障およびコミュニケーション支援のために、コミュニケーションボードを必要に応じて使用しているが、コンビニエンスストアのように常時設置するようにしていただきたい。実際に必要な時に円滑に対応ができないことが多いため。
【総務省回答⑤】
コミュニケーションボード設置等の対応例について昨年周知したところであり、引き続き横展開に努めてまいります。
4. 通訳者の立場について
【要望⑥】
公職選挙法では、手話通訳者・文字通訳者は運動員として位置付けられていますが、通訳者が特定の候補者や政党に対して偏った立場を取ることが期待される可能性があります。これは通訳者の中立性を損なうことになり、聴覚障害者が正確で公正な情報を得る機会が減少する恐れがあります。運動員とは別の立場に変更を検討していただきたい。
【総務省回答⑥】
選挙運動員は自発的かつ奉仕的に運動を行うものとされており、元来、報酬を支給することはできませんでしたが、公職選挙法の改正により、報酬を支給することができる対象が順次拡充される中で、手話通訳者及び要約筆記者に対しても、一定額の範囲内で報酬を支給することができることとされた経緯があります。選挙運動の方法については、これまでの国会における審議や各党間の議論の積み重ねの中から現在のルールが設けられているところであり、御要望についても、選挙運動のあり方に関わる問題であることから、各党各会派において御議論いただくべきものと考えます。