【レポート】オンラインセミナー 「専門分野通訳の現状と課題を知ろう!」(5/30開催)
2020/5/30にIGBとしては初のオンラインセミナー 「専門分野通訳の現状と課題を知ろう!」が行われました。
聴覚障害者の社会進出に伴い、様々な専門分野(教育、司法、電話リレーサービス)においての通訳(手話通訳、PC通訳など)が必要とされてきており、専門分野の通訳という視点で各分野の通訳を見たときに、技術面の課題がどのようなところにあるかを整理し、それを改善するための養成など制度的な取り組み等、共通の枠組みを考えていく場とすることを目的として開催されました。
参加者数は、約80名、終始質問が相次ぐ盛況でした。時間内に回答しきれなかった質問については、Webなどで回答いたします。
1番目に、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授 白澤 麻弓氏より、「教育分野の通訳について」をテーマとした講演が行われました。
手話通訳は、リアルタイム性があり、自然な会話に参加しやすく、また、話のニュアンスなどの細部の表現性が優れている。その一方、手話通訳への葛藤(おもしろい!の一方で今までとりこぼしていた情報があったと現状を知ることになる)などがある。その結果、自分に最も適した情報保障手段に出会えていない学生は多いが、その学生を支える支援を我々はするとのことでした。
2番目に、IGB理事・弁護士 藤木 和子氏より「司法分野の通訳について」をテーマとした講演が行われました。
司法分野は、他の分野とは違って、対立関係(警察など)があるため、情報共有・協力体制が得られなく、また、中立性を保つのが難しい面がある。また、プライバシーをどう保つかという問題もある。それぞれの立場で目的が異なっているので、事前の打ち合わせが重要であり、また、あらゆる手段を使ってエビデンス(証拠)を確保することが重要であるとのことでした。
3番目に、プラスヴォイス社 三浦 宏之氏より「電話リレーサービスの通訳について」をテーマとした講演が行われました。
相手の表情が見えないための難しさ、そして、電話のマナー上の問題があることを話されていました。分野的にはオールラウンダーであり、幅広い知識と経験が求められるとのことでした。
最後に、質疑応答・パネルディスカッションが、明晴学園理事 岡 典栄氏をパネルディスカッションコーディネーターに迎え進められました。「専門領域における手話通訳の正確性の検証」をテーマとして、各パネラーから意見が述べられました。
まとめとしては、次の通り。
- テクノロジーの恩恵で情報保障のレパートリーは増えた
- 情報保障が増えてきた一方で、身体的、メンタルヘルスなどの新たな課題も出てきている
- 遠隔によるニーズが増えてきている
- 通訳に対する社会的な認知、評価を上げていく必要がある
- 専門性を担保しながらプロとして社会で活躍できるための経済的補助(お金)が必要である
最後の挨拶にて、IGB理事長 伊藤は、「IGBとしても専門通訳の課題に対して議論を深め、課題に向けて対応策を考えていきたい」と締めくくりました。
参加申込者で、見逃した方向けにアーカイブ動画を用意中ですので、別途お知らせします。参加者以外で参照したい場合は、購入していただくことで参照できるようにする予定です。こちらも別途お知らせします。