【ご報告】「マイノリティ・マーケティング」刊行記念トークショー(2023/7/29)
NPO法人インフォメーションギャップバスターは、去る、2023年7月29日(土)に3/8に刊行した「マイノリティ・マーケティング」出版記念イベントをオンラインで行いました。
【開催の経緯】
刊行した「マイノリティ・マーケティング」は聴覚障害者やマイノリティだけでなく、ビジネス・経済界にも大きなインパクトを与えました。従来の人権擁護・アドボカシー活動にはない斬新な視点でマーケティング手法を提言する著者が、10年間の活動のエッセンスをまとめた本書は、多くの方に読まれています。
この執筆に至った背景、また、執筆にあたった想いなどを、手話リンガルのアナウンサー鬼木笑氏が、インタビューして、掘り下げる「オンライントークショー」を開催することになりました。
【内容】
第1部:著者と本の紹介について
(NPO法人インフォメーションギャップバスター理事(以下IGB) 山口タケシ氏)
山口氏から、ご自身の自己紹介、著者の紹介、著者が2010年にIGBを設立した背景、IGBでの取組みの紹介、本のタイトル「マイノリティ・マーケティング」の説明などの紹介をいたしました。
第2部:著者 鬼木氏から伊藤芳浩氏へのインタビュー形式によるトークショー
~伊藤芳浩さんとは? IGB設立までに至るまでの軌跡~
鬼木氏より伊藤氏の経歴について伺うだけでなく、趣味についても伺い趣味の1つである旅行について、エジプトとインドネシアの海外ボランティアで印象に残ったことをお話いただき、参加者に親しみを持ってもらえるような展開になりました。
生い立ちから、IGBの活動につながった経緯を話していただき、IGBの現在の取組みについてのお気持ちを伺いました。団体を設立した背景では、聴覚障害者の職場のコミュニケーションや孤立などの課題があったこともお話いただきました。
現在はIGBの会員は100人程度に増えて、メンバーのニーズも広くなり、生活、教育、文化など幅広く手掛けているそうです。
また、伊藤氏の学生時代には環境が整っていなかったため、医師になりたくても大学の医学部に入れなかったこと、同じろうの学生の不安や悩みを知ることができたことが印象に強く残っており、現在の活動に繋がっているそうです。
現在は、活動する上でいろいろな人とお話したり、人と人を繋いだりして、自分の引き出しをたくさん増やすことができ、充実しており楽しいとのことでした。
~後半では「マイノリティ・マーケティング」の内容を深めてお話をいただきました。~
仕事とIGBの活動の忙しい中、本を書こうと思ったきっかけについて2点、お話いただきました。
- 手話を使用する言語的マイノリティという立場で、マジョリティ中心の社会を変えることについて悩んできた経験から、世の中にいる様々なマイノリティにもぜひ活用してもらいたいと思った
- マジョリティ側にいる政府や企業関係の方に、マイノリティの現状を知ってもらい、理解につながるきっかけを作りたかった。
執筆での工夫点についても、専門家や障害のことを全く知らない人にも理解してもらえるように、分かりやすく数字やデータをあげて具体的に示すようにしたり、具体的なシーンをあげたりしたことを話していただきました。
またマーケティングを非営利団体で取り入れるメリット・効果についてもお話いただきました。
そして、「マイノリティ・マーケティング」の大切なポイントを2つ+αをお話いただきました。
その中で一番大事なポイントで、
社会を変えるための具体的な行動を起こす3本の柱について説明いただきました。
3つのバランスが重要で、どれか欠けていてもうまくいかないそうです。
- アドボカシー=広報活動
- エンゲージメント=世論の形成
- リコメンデーション=要望活動
鬼木氏より、3本の柱について深堀りしたインタビューがあり、「発信の秘訣とは?」「キーパーソンと繋がりやすくなる秘訣とは?」についても伊藤氏に引き続きお話いただきました。
2つ目のポイントでは
マジョリティ側の人にも通じやすい、言葉の引き出し をたくさん持っておくことを説明いただきました。
「お互いにとって利益やメリットのあるものを持っておくことで、ともに歩みやすくのではないか」と思うとのことでした。
また、「マジョリティ側の考えを理解する方法やメリットの見つけ方」についてもお話いただきました。
例として、政治家またマニフェストに使われている言葉と同じ表現をすること、議会の定例会の時期を把握することで提案しやすくなることがあげられました。
政府のタイミング、社会の中のタイミングなど関心を持って注目していくことが大切になるそうです。
また、特別にもう1つポイントをお話いただきました。
環境や制度だけではなく、「社会全体で困っている人の気持ちを理解して把握することで、正しいかたちで支援をするという意識改革が必要」とのことでした。
社会全体の意識改革について、より多くの人に理解してもらいたい3つの言葉「特権、アンコンシャス・バイアス、マイクロアグレッション」の意味を説明していただきました。
最後に、今後の目標についてと参加者へのメッセージで締めくくられました。
伊藤氏の今後の目標としては、社会全体の意識改革、こころのバリアフリー化について、様々な人とつながって、協力しあって、事業を立ち上げたいとのことでした。その中で、例として「アート」があげられました。アートの力を借りて、お互い理解を深めていくことを目指せたらということでした。
興味のある方があれば、伊藤さんに声をかけてください。
そして、『この世の中にはたくさんの矛盾があるけど、諦めないで少しの勇気を出して「マイノリティ・マーケティング」をぜひ活用して一歩踏み出していただきたいと思います。そのためのきっかけに本書がなれば嬉しいと思います。』という言葉で締めくくられました。
~イベント中間と最後に質問タイムが設けられました。~
その中では、
・聴覚障害者の在宅ワークについて
・伊藤氏が手話をどのように身に着けたか
・伊藤氏のろう者の立場での国語の勉強方法について
・ろう者の議員から政府への発信について
・手話通訳の立場のマジョリティからマイノリティを支える心構えについて
・大組織にいるNPO団体でのマーケティングを活用しての取りまとめについて
・インクルージョン教育についてのアクションプランについて
など様々な質問が出ました。
鬼木氏からも、「近くの仲間を増やす、伊藤さんらしい工夫の仕方についてはどんなところか?」と質問をさらに深めていただきました。
また、アートについては早速デザイン事務所の方や、趣味がアートの方より賛同のコメントが寄せられました。
【所感】
難しい言葉を伊藤氏の分かりやすい説明と、鬼木氏の丁寧なインタビューにより、理解が深まったように感じます。
今回の企画で興味を持たれた方は、本をぜひ読んでマイノリティもマジョリティの方もそれぞれ内容を深めていただけると、伊藤氏の言う「社会全体への意識改革」や「様々な人と繋がること」に繋がるのではと思いました。
私自身も「できるかも。」と、ワクワクし充実した内容でした。
(文責:NPO法人インフォメーションギャップバスター会員 永岡 ちひろ)
アーカイブ視聴を希望の方は、以下から申込ができます。(申込期限:2023/8/31)皆さまの申込をお待ちしています。