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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【ご報告】2022年電話リレーサービス普及啓発活動報告


NPOインフォメーションギャップバスターは、2014年より電話リレーサービス普及啓発活動を継続しており、2022年も同様に活動しており、本報告では、2022年に行った各種活動の報告です。

2021年7月1日より法(※1)に則った公共インフラとしての電話リレーサービスが、新たに運用を開始しました。

これにより、それまでモデルプロジェクトとして試験運用していたときのサービス内容と比べると、おもに以下のようなメリットを享受することができるようになりました。

(※1 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律 令和2年12月1日施行)

おもなメリット

  • 24時間365日利用できるようになった
  • 緊急通報ができるようになった(110、119、118)
  • 聞こえる人からの電話を受信できるようになった
  • 法人による登録ができるようになった(条件あり)
  • 障害者手帳を持たない人も利用登録できるようになった(条件あり)

他にも細かい変更点はあり詳細は省きますが、耳が聞こえないあるいは聞こえにくい人や発話が困難な人など(以下“当事者”)にとって、言うまでもなくこれらは大きなメリットです。

特に、利用する時間帯に制限がないことや、緊急通報が可能になった点に関しては、命に直結する状況での利用も想定されるため、これまでIGBをはじめ様々な関連団体や個人からも要望が挙げられてきており、それらの活動が実った形となり大変嬉しく思います。

また、公的運用開始当初は煩雑だった登録方法に関しても、利用者の声を受けて比較的早い時期に見直され、登録しやすく改良された点も評価できます。

一方で、まだまだ課題は残されており、おもに以下のようなものが挙げられます。

おもな課題

  • 電話を受ける側が、電話リレーサービスと聞いて怪しんで切ってしまう
  • 電話リレーサービスのオペレーターを介した場合、銀行や信販会社などの一部の機関で本人確認が行えない(本人と認証してもらえない)ため手続きを進めることができない
  • それまでのモデルプロジェクトでは通話料が無料だったものが有料になったことに対する不満

このうち通話料に関しては、それまでのモデルプロジェクトはあくまでも公的な制度化を求めるための試験運用のために日本財団が負担していたこと、また、一般的な音声電話と同様に、利用者が使った分(通話に費やした時間に応じた分)だけ負担するという公平性を考慮したものであることなどを考えると理解できる範疇と言えるでしょう。

問題となるのは他の2点で、これらは電話リレーサービスに対する認知が広く行き届いていないこと、また、銀行や信販会社などの監督官庁からの積極的な周知不足によるものと考え、IGBでは2022年4月〜7月にかけて総務省、金融庁、経済産業省へ質問書を送付しました。(※2)

おもな質問内容とそれらに対する回答は以下のとおりです。

※2

  • 総務省 情報活用支援室 情報バリフリー担当(2022年4月8日、5月7日、7月12日)
  • 金融庁 監督局 総務課(2022年6月7日)
  • 経済産業省 商務・サービスグループ 商取引監督課(2022年6月7日)

 

おもな質問内容と回答(抜粋)

Q1. 電話リレーサービスの周知のために総務省からその他の省庁や自治体に発出した通知や案内はあるか?(総務省宛)

A1. 協力依頼を以下のとおり発出した。(2022/4/28回答時点)

・2020/7/6 金融庁・経済産業省 宛

・2021/4/2 各都道府県・各指定都市・中核市(福祉窓口関連) 宛 ※厚生労働省連名

・2021/4/2 各都道府県・各市区町村・中核市(政策窓口関連) 宛

・2021/4/20 金融庁・経済産業省 宛

Q2. (本人確認について)現在総務省ならびに関係省庁はどのような働きかけを行っているか?(総務省宛)

A2. 日本財団電話リレーサービスから、本人確認の認知不足による事例等について報告を受けており、総務省としても引き続き電話リレーサービスの普及浸透に向けて関係機関と連携して取り組みを進めている。経済産業省及び金融庁においても、業界団体を通じた周知広報を行うとともに、積極的に電話リレーサービスを活用するよう要請している。金融庁が現時点で把握しているところでは、少なくとも大手金融機関においては、電話リレーサービスへの対応が進捗しており、今後アンケート調査等により実態を把握していく予定と聞いている。(2022/4/28回答時点)

Q3. 総務省としては、「本人確認の手段・方法において電話リレーサービスを含めるべき」というお考えがあるか?(総務省宛)

A3. 電話リレーサービスを介した電話による本人の意思確認の手続を可能とするように関係機関と連携して施策を推進しており、クレジットカード会社や金融機関等において電話リレーサービスを介した電話による本人の意思確認の手続が可能となるよう、経済産業省や金融庁に協力の依頼を行っている。(2022/5/24回答時点)

Q4. (サービスの普及について)今後どのような働きかけをする予定か?(金融庁宛)

A4. サービスの提供開始後、業界団体との意見交換会等の機会を通じて電話リレーサービスへの対応を要請してきている。また、アンケート調査において実態を把握しており、その結果も踏まえ、電話リレーサービスの普及が進んでいない業態に対し電話リレーサービスに対する積極的な取組を要請していくこととしております。要請の内容等につきましては、金融庁ウェブサイトにおいて随時更新してまいります。(2022/6/15回答時点)

Q5. 「本人確認の指針(基準)」等を制定する予定はあるか?(金融庁宛)

A5. 現在提供されている電話リレーサービスを通じた本人確認の実施に何らかの支障や課題等が確認された場合には、課題解決に向けて、サービス提供機関や金融業界団体の取り組みを促してまいりたいと考えている。(2022/6/15回答時点)

Q6. 経済産業省ではどのような働きかけを行っているか?(経済産業省宛)

A6. 2021年2月以降、障害者差別解消法の周知と合わせて所管業界団体や独立行政法人への周知を実施しており、本制度の所管省庁である総務省と連携を図りながら、本サービスの周知を進めていきたいというふうに考えている。

公共インフラとして広く利用できることが求められるべきということも認識しており、本人確認についてはクレジット事業者に対して電話リレーサービスに対する理解の促進、および電話リレーサービスを介した本人の意思確認手続きの積極的な対応を要請し、電話リレーサービスの周知に取り組んでいるところです。(2022/11/30意見交換会にて)

Q7. 電話リレーサービスのオペレーターは当事者の代理人ではなく、あくまでも通訳であり、当事者本人と同等にみなすべきという点に対する理解を広くかつ迅速に周知していただきたい。(総務省宛)

A7. サービスの理解促進のため、各都道府県及び各市町村等に対して電話リレーサービスを介した聴覚障害者等からの各種行政手続の連絡や問い合わせ等について適切な対応を行っていただくよう周知をしてきた。今年6月にも厚生労働省と連名で各都道府県等に対し改めて、聴覚障害者情報提供施設、関係団体、各市区町村等に対する制度等の周知依頼をしている。

また、電話リレーサービス提供機関の日本財団電話リレーサービスにおいても、7月1日以降TVCMやYoutube広告、SNSにおける情報発信などを実施しており、電話リレーサービスによる電話は通常の電話と同等のものであるという趣旨が幅広く伝わるように周知活動を実施しているところだ。

今後も関係省庁や電話リレーサービス提供機関とも連携しつつ、電話リレーサービスの周知に取り組んでまいります。(2022/9/28回答時点)

現在の課題をあえて絞ると、「周知不足」と「本人確認問題」の2点が挙げられるが、これまでの総務省、金融庁、経済産業省各所の回答を通して、それぞれ周知を行なってはいるものの、現実にはまだまだ広く周知が行き届いてはいないと言わざるを得ない状況が見えてきた。

また本人確認に関しては、あくまでも“依頼ベース”のため実際の運用は事業者に委ねられており、いずれも何らかのより積極的な施策が必要といえる。

そのため(周知方法の工夫・検討も含め)継続的・積極的な周知を関係各所に促すと同時に、IGBとしても引き続き周知普及に努めていく所存です。

(文責:電話リレーサービス普及啓発プロジェクト担当理事 山口 タケシ)

この記事のリンク | カテゴリ: お知らせ, 電話リレーサービス
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