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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【お知らせ】メディアにおけるろう・難聴者の描写に対する問題提起


特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター (所在地:横浜市港北区 理事長:伊藤芳浩) (以降、IGB)は、日本において「当事者による表象(*)」が適切に行われず、結果として、メディアにおいて、ろう当事者やコミュニティの誤った描写が行われている現状を問題視しています。こういった現状に一石を投じたいとの想いから、全米ろう協会発行のメディアにおけるろう・難聴者の描写に関するガイドラインなどの和訳版を公開いたします。

(*) 特定の出来事や状況に関与している人々が、自分たちの経験や感情、意見を伝えること。当事者自身が自己の立場や経験を表現し、メディアが正確に描写することで、より正確に理解される機会を得ることができ、社会的な変化や政策決定のプロセスにおいて重要な要素となる。

影響力の大きいテレビ放送などのマスコミにおいて当事者を扱う場合、センシティブな問題になる可能性があるため、当事者と協働しつつ、情報発信していただくなどの配慮が必要と考えています。そして、日本でのマスコミに対する現状を変えたいとの思いから、IGBは、全米ろう協会発行の「Guidelines for Media Portrayal of the Deaf Community(メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン)」及び「Position Statement On Portrayal Of Deaf And Hard Of Hearing People In Television Film And Theater(​​テレビ・映画・演劇における、ろう・難聴者の描写に関する意見表明)」の日本語訳を有志一同で行うこととしました。

今後は、然るべき団体が、「メディアのろうコミュニティ描写をめぐるガイドライン」及び「テレビ・映画・演劇における、ろう・難聴者の描写に関する意見表明」の日本版を作成していただきたいと考えています。

【日本語翻訳チームメンバーコメント】

翻訳:高山 亨太

地球上で最大の権力を持つ組織はメディアだと言われています。メディアが「ろう」を扱うときの違和感の正体について議論する一歩となることを願っています。

翻訳:杉山 安代

話題の泣けるドラマ、心動かされるニュース――それらは本当のろう難聴者の姿なのか、当事者が望んだ描かれ方なのか。聞こえる家族として聴者のひとりとして常に考えていきたいテーマです。

協力:富田 望

当事者による表象が大事だ、というと、当事者ではない役者の演技力やプロフェッショナルの軽視の形の一つだと捉える方がいらっしゃるようです。またろう・難聴者の役者たちも経験を積む必要があるという方がいらっしゃいます。ここで述べている話は全くそういうことではなく、別の次元の話なのです。メディアが私たちの声を汲み取ってくれることを祈っています。

協力:牧野 麻奈絵

ドラマでろう者を演ずる聴者の俳優が拙い手話を表出していたり、ろう者のキャラクターが「可哀想な人」として描かれていたりするのを観るたびにとても残念な気持ちになります。いつになったらろう者の俳優を起用し、ろう者のありのままの姿を取り上げてくれるのでしょう。この翻訳が、日本での「当事者による表象」を実現する一助になることを心から願っています。

協力:牧原 依里

誰かを演じることによって他者を知ることができる、限りない可能性を持つ「演技」だからこそ、聴者とろう者・難聴者の間にある構造的な差別を正当化するために演技論が使われない未来が日本にも早くやってくることを願っています。

協力:湯山 洋子

ろう難聴者を扱ったドラマが出ること自体は、私たち当事者に注目してもらえるので嬉しい。でも、製作側の表現はいつも私たちの本来の姿とかけ離れている。色眼鏡なく、より自然な描写ができるようになるには、まずはろう難聴者の実態を知っていただき、脚本づくりからろう難聴者の協働がなされることを願っています。

発起人:伊藤 芳浩

メディアによって、ろう・難聴者の実態が、より自然な形で描写され、発信されるためには、当事者(ろう・難聴者)と建設的な対話を通して、協働していく必要があります。本翻訳が、今後の日本において、適切な形で適用されることを心から願っています。IGBも様々なチャネルを通して、関係者と建設的会話を試みてまいります。

【謝辞】

翻訳の許可をいただいた、全米ろう協会のLizzie Bloomさんに心から感謝いたします。

【ご参考】
IGBは、2022年10月6日からフジテレビ系「木曜劇場」枠にて放送された「silent」というドラマ番組にて、当事者に対して配慮が不十分な表記があったことを問題として、意見書を提出しました。意見書に対して、フジテレビのドラマ制作担当者からは、今後の番組制作に反映していくという旨の誠意ある回答をいただきました。

▼【ご報告】「silent」の放送のあり方についての意見書提出のお知らせ

【ご報告】「silent」の放送のあり方についての意見書提出のお知らせ

 

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