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Information Gap Buster 特定非営利活動法人

【ご報告】難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)に対する意見提出


NPO法人インフォメーションギャップバスターは、2021年12月10日より、厚生労働省がパブリックコメント募集中の難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)に対して、2022年1月8日に下記の通り、障害者権利条約などに沿って、偏りのない中立的な情報提供がなされること、文部科学省にて推進中のインクルーシブ教育との連携などの意見を提出いたしました。

▼「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)」に関するご意見の募集について(更新版)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495210313&Mode=0

【提出意見内容】

# 該当箇所 修正案 理由
1 タイトル、全体 (修正前) 難聴児
(修正後) 聴覚障害児(以降すべて)
難聴児だけでなく、ろう児も含まれると思われるため、これらを含んだ名称にすべきである。
2 1. 総則(1) (修正前) また、難聴児及びその家族等に対する支援については、発達段階に応じた療育を受けながら難聴児が本来持つ力も生かして、心身の健やかな成長や発達を保障することを目的とし、(修正後) また、聴覚障害児の就学前支援については、将来的に聴覚障害児が持つ本来の能力を発揮できるように、前言語期からの視覚的コミュニケーションを家族が行えるように支援し、手話の習得環境を確保すること。それにより、幼児教育で掲げられる心身の健やかな成長や発達を保障した上で、発達段階に応じて必要な音声言語訓練等の療育を受けられるようにすることを目的とし、 国内法の上位に位置づけられる国連の障害者権利の第二十四条「教育」には、以下の項目があります。(b)手話の習得および、ろう社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。
(c)本人にとって最も適当な⾔語並びに意思疎通の形態及び⼿段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最⼤にする環境において⾏われることを確保すること。
この条約に批准している我が国では、この方針に沿って、国内での対策を進める必要があります。障害者の権利条約では、聴覚障害のある子どもには、手話を習得させ、また手話を話すろう者コミュニティの同一性を促進することや、学問的・社会的な発達を最大にする環境を確保することが明記されています。子どもが心身ともに健康に育つためには、聴覚障害があっても完全に情報にアクセスできる言語である手話での教育環境を整備する必要があり、それは早期療育においても同様です。特に、前言語期(0〜1歳)での視覚的コミュニケーションのノウハウを教えることが重要で、この時期には、親子のやりとりによって愛着(アタッチメント)が形成されます。この時期に適切な関わり合いが得られないと、心身の発達に影響を及ぼすという言語剥奪症候群になる可能性もあります。補聴器での音入れを行うにしても、親子コミュニケーションは音声だけではなく、視覚的な方略を取り入れるべきです。また、人工内耳を装用することにしても、1歳までの前言語期のコミュニケーションが疎かにならないよう、0歳台の前言語期も充実させるべきです。0歳台の脳の成長は著しく、脳神経回路の刈り込み、強化などが外からの刺激との相互作用によってなされるためです。心身の健やかな成長は、2017年告示の保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園・保育要領の改訂にて採用された幼児教育の5領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)をすべて確保することによってのみ達成されると考えられます。音声言語訓練は、聴覚障害児にとっては「学習」であり、ある程度の学習が可能な年齢になる前に開始することは心身の健やかな成長を妨げる恐れがあります。(1)手話によって心身の健やかな成長環境を確保した上で、(2)療育として聴覚や音声言語の訓練を行うのが適切な順番と考えられます。
3 1.総則(2) 難聴児支援の基本的な考え方<早期発見の重要性> (修正前) 難聴は、早期に発見され適切な支援が行われた場合には、音声言語発達等への影響を軽減することや、手話等の言語・コミュニケーション手段の獲得を円滑にし、難聴児の今後の社会生活をより豊かにすることにつながると考えられるため、早期に発見し、療育につなげることが重要である。(修正後) 聴覚障害は早期に発見され、適切な介入が行われた場合には、手話言語と音声言語双方の言語発達への影響を軽減し、他者とのコミュニケーションによって育まれる認知能力を高め、聴覚障害児の今後の生活を豊かにする。 我が国が批准している国連の障害者の権利条約の第二条「定義」にあるように、言語には、音声言語と手話言語、その他の形態の非音声言語が含まれます。音声言語を明記するのであれば、手話言語を同じレベルとして併記すべきです。音声言語を身につけても他者とのコミュニケーションがスムーズでないのであれば、他者と自己の考えや感情を分けて理解する心の理論などの認知発達に遅れが生じることは、平成19〜24年度に厚生労働省 感覚器戦略研究「聴覚障害児の言語能力等の向上」でも示されています。また、早期介入には、幼児教育の視点が含まれるべきです。幼児教育の指針は2017年と最近に改訂され、このなかに「人間関係」領域が含まれます。(保育所保育指針第1章総則)「友達と共に過ごすことの喜びを味わう」など、子どもが孤立しないような環境を整備することで、聴覚障害が生み出すネガティブな影響を軽減することが重要です。このためには、集団に入ると聞き取れない音声言語を身につけさせることよりも、手話の集団に入ってコミュニケーション能力を養うことが基本的な人権として優先されると考えられます。障害者の権利条約の「教育」にも「(b)手話の習得および、ろう社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。」という項目があります。
4 1.総則(2)難聴児支援の基本的な考え方<保健、医療、福祉および教育の連携> (修正前) 多面的な発達の評価に基づき、あらゆる言語・コミュニケーション手段の選択肢が保障され、また、選択後の寛容性が担保されることが重要である。(修正後) 心理・認知発達の指標、親の精神状態の評価、子のコミュニケーション応答について音声言語だけでなく手話言語でも多面的に評価し、発達の段階に応じた対応ができるように体制を構築する。 「多面的な発達の評価」は現時点で可能なものが日本語に基づいたものがほとんどであり、手話を選択しにくい現状があります。しかし、実際は、手話を使う聴覚障害児は多くいます。アメリカでは、早期介入として、手話の導入を早期支援員が行っています。このときに使えるチェックリストもあります。私立明晴学園では、アメリカ手話発達のチェックリストの日本語訳を行い、使用しています。日本手話では、金沢大学 武居渡教授がイギリス手話の手話文法理解テストを日本手話訳したものや、手話語彙の連想テストなどもあります。こうした手話言語発達のチェックリストの標準化や、実際にアセスメントができるようになるための勉強会なども開催されるべきです。また、心理・認知発達指標は、言語に依存しない課題もありますが、総じて言語でコミュニケーションが取れないと実施が難しく、指示が通じていないからできなかったのか、指示は通じているが心理的な問題があってできなかったのかの評価ができません。そうすると発達障害の重複も発見が困難で対応が遅れるおそれもあります。このため、手話ができる心理専門職や、発達指標を取れる心理職の補助をするための知識をもった手話通訳者の養成が急務です。これには、手話のできる聴覚障害学生をアファーマティブアクションによって臨床発達心理士や公認心理師がとれるよう心理職養成大学の講座で養成するほか、子どもの手話を専門とする手話通訳者の研修を行う必要があります。
5 1. 総則 (2) <本人及び家族等を中心とした支援> (修正前) 本人が乳児である場合はその家族等が意思決定を行うことを認識し、難聴に関する知識をもたない状態から、難聴児本人の多面的な発達等の評価等の情報を正しく理解し、意思決定できるようになるまで、関係者で本人及び家族等に寄り添った支援を行うことが重要である。(修正後) 本人が乳児である場合はその家族等が意思決定を行うことを認識し、難聴に関する知識をもたない状態から、耳鼻咽喉科医、手話での支援を行うろう学校教員、言語聴覚士それぞれからの偏りのない情報提供体制を整え、難聴児本人の適切な言語・コミュニケーション手段の獲得による多面的な発達等の評価や聴覚障害者のロールモデル等の情報を正しく理解し、意思決定できるようになるまで、関係者で本人及び家族等に寄り添った支援を行うことが重要である。 令和3年5月28日の第2回基本方針検討会で南医師が解説した、国際的に支持されているろう・難聴児の「家族を中心にした早期介入(FCEI)」(Moeller et al. 2013)の原則のひとつに、偏りのない十分な情報提供があります。この「偏りのない」というのは、音声を獲得することだけではなく、手話言語の獲得や、併用、コミュニケーション発達についての見通しなどを含むものであるので、家族に難聴を治療することだけでなく、前言語期の視覚的コミュニケーションや手話を学ぶための情報を提供することも必要です。<適切な言語・コミュニケーションを選択し、それをしっかりと獲得することで、リテラシーの礎が確立され、それが発達に影響を及ぼすと考えられるため。また、言語・コミュニケーションを獲得した大人の難聴のロールモデルは想定される難聴児の将来の姿をイメージしやすいため、重要であると考える。
6 1. 総則 (2) <学校や障害児通所支援事業所等関係機関における取組の重要性> (修正前) また、軽中等度難聴児や人工内耳装用児においては通常の学級に在籍することがあるため、特別支援学校のセンター的機能の活用や難聴特別支援学級の専門的な知見を活用した支援、通級による指導の活用及び難聴児への支援を行っている(修正後) また、通常の学級に在籍することを希望された場合は、特別支援学校のセンター的機能の活用や難聴特別支援学級の専門的な知見を活用した支援、通級による指導の活用及び難聴児への支援を行っている 通常の学級に在籍するのは軽中等度難聴児や人工内示装用児に限らず、重度難聴児も含むべきである。障害の軽重によらず、選択肢は用意すべきである。
7 1. 総則 (2) <学校や障害児通所支援事業所等関係機関における取組の重要性> (追記) さらに、インクルーシブ教育の観点から、教員や共に学ぶ児童や親たちの障害特性や言語・コミュニケーション手段に対する正しい理解が得られるように啓発が行われることが重要である。 インクルーシブ教育の観点から、教員や同級生や親たちへの聴覚障害や言語・コミュニケーション手段に対する理解を得ることが、学習内容の理解促進につながると考える。
8 2. 方策 (1) 2つ目の◯ (追記) 担当部局は、保健、医療、福祉及び教育各分野の難聴児支援サービス内容の情報提供や、あらゆる言語・コミュニケーション手段の情報提供などを行うこと。 担当部局が具体的に何をすべきかを明示していた方が良いと考える。
9 2. 方策 (2) [2] <多様な関係者の参画>1つ目の◯ (修正前) また、保健師等様々な施設に参画するコーディネーターや、特にロールモデルやメンターとしての当事者・当事者支援団体を連携体制に加えるよう努めること。(修正後) また、保健師等様々な施設に参画するコーディネーターや、特にロールモデルやメンターとしての当事者(聴覚障害をもつ成人:手話を主に使う者、聴覚活用をしている者、人工内耳装用者等)・当事者支援団体を連携体制に加えるよう努めること。 「多様性」を反映し、モデルに偏りがないように、様々なモデルがあることを方針内で具体的に明示することが望ましいと考える。
10 2. 方策 (2) [3] <情報提供>2つ目の◯ (修正前)手引き書等の作成、相談窓口の周知、難聴児の子育てに関する様々な情報(人工内耳、補聴器、手話、療育等に係る選択等を含む。)の提供のため(修正後)手引き書等の作成、相談窓口の周知、難聴児の子育てに関する様々な情報(手話、人工内耳、補聴器、療育等に係る選択等を含む。五十音順)の提供のため 療育等に係る選択肢を並べているが、掲載順に恣意がないように公平さを期する必要があり、五十音順に並べるのが妥当と考える。
11 2. 方策 (2) [3] <情報提供>2つ目の◯の脚注(*8) (追記)
・手話などの言語・コミュニケーション手段に関する知識
・手話を習得可能な場所・動画教材の紹介
・当事者団体、聴覚障害者情報提供施設の紹介
・きょうだいの子育て、支援
・学びにつながる教材として、手話などの言語・コミュニケーション手段に関する知識は必要であると考える。
・難聴児とともに育つ子どもである「きょうだい」は難聴児と親の影になり気付かれにくいですが、早期支援、情報は非常に重要です。必要なケアが受けられず精神的虐待やネグレクト状態、不登校や自傷他害の例も少なくなくありません。また、本基本方針作成に関する第2回検討会に参加の「全国難聴児を持つ親の会」の資料のみ問題と要望」にも「7きょうだい児の問題 →ソーダの会や親の会等での支援」との記載があります(24ページ目)。
12 2. 方策 (2) [3] <情報提供> (追記)
○聴覚障害児を持つ保護者や家族が手話を身につけ、聴覚障害児本人とともに手話を使えるための学習機会の提供
現在、聴者の親は手話で子育てをしたいと考えたとき、手話を学べる場が非常に乏しいのが現状です。このため、学習機会を地方自治体が用意する必要があると考えます。
13 2. 方策 (2) [3] <相談対応> (修正前)
○ 家族等からの相談等に対応して、多様性と寛容性の観点に留意しつつ、複数の療育方法の選択肢を提示し、どの時期においても中立的な立場での相談対応や難聴児の発達に関する知見をもって、家族等の精神面も含めた支援ができるよう、協議会の活用等による関係機関と連携した支援体制等の整備を行うこと。(修正後)
○ 新生児聴覚スクリーニングでリファーになった子の保護者に対し、プッシュ型で偏りのない情報提供を行えるよう、関係機関で連携しながら情報共有を行い、カウンセリングを行う体制を整えること。
○ 親の障害受容を支援するためのカウンセリングを行いながら、聴覚障害児の前言語期の視覚的コミュニケーションを1日でもはやく確保できるように支援を手厚く行うこと。
○ 聴覚障害児にとってベースラインとなる手話の獲得支援ができるように、基本的には聴覚特別支援学校の乳幼児相談に、手話での療育の情報の拠点を構え、手話獲得支援のための情報を保護者に提供すること。
乳児を抱えた保護者が、相談に行くプル型の相談対応では、聴覚障害児本人への対応が遅れる可能性があるため、家庭訪問や地域の公民館を利用したプッシュ型の支援体制を整えて欲しいです。令和3年5月28日の第2回基本方針検討会で南医師が解説した、国際的に支持されているろう・難聴児の「家族を中心にした早期介入(FCEI)」(Moeller et al. 2013)の原則のひとつに、偏りのない十分な情報提供があります。この「偏りのない」というのは、音声を獲得することだけではなく、手話言語の獲得や、併用、コミュニケーション発達についての見通しなどを含むものであるので、家族に難聴を治療することだけでなく、前言語期の視覚的コミュニケーションや手話を学ぶための情報を提供することも必要です。
14 2. 方策 (2) [4] <支援の専門性向上>2つ目の◯ (追記)また、聴覚障害者と円滑なコミュニケーションが取れるように、必要に応じて手話など 教員が、児童に対する教育・指導を円滑に行うため、手話などの言語・コミュニケーション手段を習得することは必要であると考える。
15 2. 方策 (2) [4] <支援の専門性向上>3つ目の◯ (修正前)聴覚障害教育の専門性向上のための取組で小学校等での障害者理解の促進に向けた取組を行うこと。(修正後)聴覚障害教育の専門性向上のための取組やインクルーシブ教育の一環で小学校等での障害者理解の促進に向けた取組を行うこと。 現在、文部科学省が進めているインクルーシブ教育施策に合わせて行うことが重要であると考える。
16 2. 方策 (2) [4] <支援の専門性向上> (追加)
○聴覚特別支援学校教員の手話での早期支援、幼児教育の専門性を高めるために、手話研修と手話言語発達に関する研修を実施すること。またそのための基礎研究を十分行うこと。
聴覚特別支援の教員免許取得条件に手話の技能が含まれず、ろう学校に赴任してから手話を自己研鑽として身につける教員が大多数であることから、十分な手話での早期教育や、幼児教育を実施することは現在殆どの地域で不可能です。そこで、手話専門家の監修に基づき子どもの手話に対応できるよう、手話研修制度を設計する必要があると考える。
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